エジプトと言えば砂漠。砂漠と言えばオアシス。
エジプトに来たら訪れてみたいと思っていたオアシスの街。広大な砂漠の中にポツンとあって、そこには生命を育む湧水があり、人々が古代から暮らしを続けてきた。
隔絶された砂漠の中の秘境。オアシスを旅するキャラバン隊。何だかそんなロマンに駆られて、シワ・オアシスへと足を伸ばした。
シワ・オアシス 命の水がつないできた人々の暮らし
地中海沿いの街メルサマトルーからヒッチハイクでシワ・オアシスへと向かう。
言葉が通じない国でのヒッチハイクは時に簡単ではない。今回はまさかのベドウィンのゲイのおじさんに襲われかけた(笑)アソコまで出してきて、今では笑い話なのだけれど、まぁ何も起こらなくてよかった。
さらに道中、エジプト軍の管理するチェックポイントで怪しまれたけれど、ヒッチハイクをしている事(アラビア語版のウィキペディアのページを見せて)を説明したら、納得して目的地までのトラックを止めて助けてくれたり。
こんな風に旅をしていると色んなことが起こる。
メルサマトルーからシワ・オアシスまでは300kmの距離。広がる砂漠以外、なーんにもない道をひたすら進む。
そして長い過酷な砂漠の道の後、突然シワ・オアシスの緑が広がるのだ。何とも不思議な光景。
その昔、車もなく人々がラクダで砂漠を旅していたころ、このオアシスに到着した時どんなに感動しただろう。
シワ・オアシスの街にはベルベル人にルーツを持つ人々が多く住んでいる。
ベルベル人は、マグレブと呼ばれる北アフリカを中心に居住している民族で、シワ・オアシスはベルベル人が北アフリカで居住する地域としては最東端に位置するという。
砂漠地帯の深い盆地に位置するシワ・オアシスは、古代から交易における重要な停泊所であった。
シワの人々は自身をアマーズィーグの民と呼び、彼ら自身の言語であるシワ語を話し、独自の文化を引き継いで暮らしている。
シワ語とアラビア語は違う言語で、アラビア語話者も彼らの言葉は理解できない。
伝統的な街だという事を示すように、シワでは外を歩いていても女性をほとんど見かけず、見かけたとしても女性はニカブをまとっていた。
ただ伝統的でありながらもシワに住む人々はフレンドリーで、「ウェルカム・トゥー・シワ!シワへようこそ!」と陽気に声をかけてくれた。
そんなシワのシンボル的な存在で、街の中心に小高い丘の上にドーンとそびえ立っているのがシャリ要塞。
13世紀にベドウィンから街を守るために建設されたシャリ要塞は、泥、塩、石を混ぜた「カルシフ」と呼ばれる天然の断熱材の働きをする素材やナツメヤシの幹を使用して建設されています。
1926年に降った大雨で要塞のほとんどが崩壊してしまい、今ではすっかり廃墟のような姿に。要塞がまだ利用されていた頃は4〜5階建で何百人もの人々を収容していたのだとか。
シャリ要塞がまだ健在であったころ、一体どんな暮らしがここにあったのだろうと思いを巡らせてみる。
廃墟となった要塞の中を歩いてみると、建物が密集して迷路のような道。
要塞のちょうど外に出たところで、談笑しているシワのおっちゃん達に遭遇。
古代からこんな風にしてシワの人々の暮らしは続いてきたに違いない。
シャリ要塞の頂上は展望台になっており、ここから360度シワの街の絶景を眺めることもできる。
こちらが展望台から眺めるシワの街の中心部。
ナツメヤシ農園といくつか山が見えるのは東側の景色。
写真奥に見えるのはGabal Dakrurという山で、頂上からの景色は絶景。
西側にはシャリ要塞の続きと思われるさらに小高い丘があり、ここから眺める夕日は絶景だった。
ちょうど夕日が沈む時間は、イスラム教の祈りの時間を伝えるアザーンが聞こえてくる時間だった。
砂漠、オアシス、夕日、祈りの歌。
ずいぶん遠くまで来たものだと、何とも言えない異国感を感じる。
廃墟となっているシャリ要塞だけれど、要塞の一部をリノベーションして図書館や博物館、ゲストハウスとして利用する動きも。
シャリ要塞のこれからに期待大。
シワ・オアシスの中心部から離れて、郊外に広がるのは見渡す限りのナツメヤシのファーム。
シワは砂漠の中心とは思えない程、水が豊富で、汽水と呼ばれる塩分を含んだ地下水がデーツ、オリーブ、ミントの栽培に向いている。
そのためエジプトでもシワ・オアシスで獲れたデーツの品質が最も高く評価されているのだとか。
毎日のようにデーツを食べていた日が、すでに懐かしい。
あとデーツを牛乳と混ぜてミルクシェイクにすると超絶に美味!
私が滞在していた9月後半は、デーツの収穫時。
伝統的な暮らしが残るこの場所では、ロバもデーツの収穫に大活躍していました。
もちろんデーツを収穫するだけでなく、ナツメヤシの葉も余すとこなく使用。
家の敷地を区切るフェンスに浸かったり、屋根にしたり。
シワ・オアシスには豊富な水が湧き出ている事は前述しましたが、その上に色んな種類の湧水が湧き出ているのです。
例えば温泉のような温かい水、飲み水になるような水。ナツメヤシの栽培に向くちょうどいい塩分の水、塩湖ができるような塩分濃度の高い水などなど。
私がシワ・オアシス滞在中にお気に入りだったのが、オアシス中にある湧水を井戸のようなに溜めてある場所に飛び込むこと。
日差しの強い日中に勢いよく上の写真のような、湧水の溜まった天然プールに飛び込むのが最高なのです。
農業の感慨に使用されるだけでなく、地元の大人も子供もここで泳いだり、体を洗ったり。まさに人々の生活を支える水。
シワのホテルの中にはプライベートの天然湧水プールがある場所も。
こんなシワ・オアシスでも奇跡的にカウチサーフィンのホストを発見。
お世話になったモハメドとザカリ。
モハメドはカイロの出身で、一年前にシワに移住し自転車レンタル事業を営む。
ザカリはフランス出身で、シワが気に入りゲストハウスを開業しようとしている。
シワ滞在中は一緒に色んな場所に行ったり、バーベキューしたり、楽しい時間を一緒に過ごした。
いい奴らだったなー!また会いたい!
シワに来て、数日滞在しただけで帰ってしまう人がいるけれど、時間があれば一週間ぐらい滞在してほしい。
そうすればシワが持つ不思議でゆったりとした雰囲気に身も心も沈めることができる。
サイクリングで楽しむシワ・オアシス 郊外にも見所がたくさん!
砂漠の中の楽園シワ・オアシス。郊外にはオアシスっぽい美しい自然や、歴史的にも興味深い見所がたくさん。
トゥクトゥクや車でシワ中を巡るよりも、絶対にオススメなのがサイクリングでシワ中を巡る事。
それぞれの見所が自転車で巡るのにちょうどいい距離にあって、ナツメヤシのファームを通り抜けたり、湖の周辺をサイクリングするのは最高に楽しい。
死の山(Gebel al-Mawta)
まずはシワの北側にある死の山(Gebel al-Mawta)と呼ばれる場所へ。
山の側壁にはボツボツと穴が空いている…。一体なんだろう?
実は岩山全体が古代の人々の墓になっていて、沢山の石窟があります。
山の側壁に穴が掘られていたり、地面にも無数の穴が。
この墓はエジプト末期王朝からローマ時代まで使われていたようで、美しい壁画が描かれている墓もありました。
アモン・オラクル寺院
シワの中心部から北西に自転車を走らせると辿り着けるのが、アモン・オラクル寺院。
ナツメヤシの農園に囲まれた場所にある古代の神殿。
この寺院は紀元前6世紀に太陽神アモンに捧げられた寺院で、アレクサンダー大王が彼がアモン神の息子=神の子であるという神託を受けに訪れた場所でもある。
まさか彼がこんな地にまで訪れていたなんて。
さて早速寺院内に入っていきますが、現在はその遺構が残されているのみ。
かつてはどんな姿であったのか?
アレクサンダー大王が神託を受けに訪れるほどの寺院。当時からシワの繁栄と、この神殿がどれほどの力を持っていたかが想像できる。
クレオパトラの泉
アモン・オラクル寺院を離れ、ナツメヤシのファームの間を縫うようにサイクリング。
アモン・オラクル神殿から南にペダルを漕いでいくと、湧水を貯めて天然のプールのようになっている場所が。
プールの周囲にはカフェが併設されており、絵に書いたようなオアシスの楽園の風景。
この美しい天然プールは、クレオパトラがたびたび水浴びに訪れたという伝説から、クレオパトラの泉と呼ばれる。
こちらの自然のプールの底には穴があって、そこからは湧き出る水の勢いでブクブクと泡が。
砂漠の街の暑い午後、この新鮮な湧水に体ごと飛び込むのがどんなに気持ちよかったか。
子供達も大はしゃぎでジャンプ!
ソルトレイク
クレオパトラの泉からさらに東に進んでいくと、ナツメヤシのファームを越えた先に塩湖が広がっている。
この塩湖のど真ん中には道があり、自転車で走っていると気持ちいい場所。
道路はガタガタな場所も多いけれど。
塩分濃度の高いこの湖からは大量に塩がとれるのはもちろんですが、ここはシワで一番有名な観光スポットにもなっています。
その理由は塩分濃度の違いにより色の違うカラフルな塩湖が美しく、 その中に体を沈めるとものすごい浮力で体が浮く。
そうあの有名な死海のように。
天然のプールのようになっていて、プカプカと水に浮くのは楽しい。
ただ要注意なのは塩湖を楽しんだ後。体に塩が残った状態だとベトベトして気持ち悪いし、体がヒリヒリしてくる。
水を持参して体を流すか、オススメはクレオパトラの泉に直行し、天然プールに飛び込んで、体に付着した塩を洗い流す事。
シワ湖一周コース
サイクリングの良いところは自分の好きな場所へ行ける事。
ある日には自転車を借りて、ソルトレイクとは反対側の湖の周囲を一周したりしました。
生温かい風に吹かれながら、オアシスらしい風景に出会う旅。
砂漠の中まで走ってみたり。
砂漠を自転車で走るのはめちゃくちゃ難しく、手で押して歩いてましたけど。
自転車を止めて休憩していたら、親切なシワの人々にお茶やフルーツをご馳走になったり。
汗をダラダラかきながら自転車をこいで、暑くなってきたら天然湧水プールに飛び込んで、びしょ濡れになるけど走ってるうちに乾いてくる。
そんな事をしながら夕方になるまで走って、探検して、最後は自転車を止めて夕日を楽しむ。
サイクリングならではのシワの楽しみ方。
エジプトのオアシスの暮らしを体験したければ、ぜひともシワ・オアシスを訪れてみてください。
シワのゆったりとしたペースと美しい自然、温かい人々と伝統があなたを受け入れるでしょう。
おわりに
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