プロヴァンス地方の小さな村ヴォンタヴォンでのボランティア生活を終え、フランス南西部のピレネー山脈に向かって少しずつヒッチハイク。
フランス第2の都市マルセイユ、モンペリエ、トゥールーズを経由し、素敵な人々と出会いながらピレネー山脈の麓に佇む小さな村セギュスまで。
セギュスでは、日本に滞在経験のあるフランス人の小さなファームを手伝いながら、雄大なピレネーをトレッキング。
そこが今回のフランス旅の最後の滞在地となった。
フランス南部ヒッチハイク旅 -プロヴァンス地方からピレネーまで-
フランス南部の旅で快適だったのが、ヒッチハイキングが簡単なところ。
多くのフランス人が海外を旅している事、フランス国内でもヒッチハイクが珍しくない事から長時間待たずして車が止まってくれる。
最長の待機時間が30分ほどで、快適にプロヴァンス地方からピレネー山脈まで移動することができた。
マルセイユ -地中海に面し、自然も美しいフランス第2の都市-
ヒッチハイキング最初の目的地はマルセイユ。
マルセイユには、ボランティアとしてお世話になっていたカトリンの娘のマルガリットが住んでいて、彼女の家に泊めてもらえるとの事。
マルガリットとは、カトリンの家で数日一緒に過ごしたこともあって、すでに仲良くなっていたので気兼ねなく遊びに行くことができた。
マルセイユはフランス第2の大都市。コスモポリタンな雰囲気の街で、多国籍な人々が街を歩いているのが印象的だった。
白人のフランス人、アラブ系、アフリカ系、アジア系、移民の人々。
様々な問題を抱えつつも、多様なバックグラウンドを持つ人々が共に暮らしているフランス。
人口減少から移民を受け入れることになるであろう日本の将来の姿も、そこに垣間見えるような気がした。
マルセイユは地中海に面した都市。大都市でありながら、周囲には美しい自然が残されている事を初めて知った。
マルセイユ中心部から簡単にバスで行ける絶景が、カランク国立公園 (Parc national des Calanques)。
色んなトレッキングコースがあるみたいだけれど、我々が歩いたのはバス停「Luminy PN des Calanques」から美しいビーチ「Calanque de Morgiou」。
地中海沿いの丘陵地帯を、入り組んだ美しい海岸沿いまで歩いていくトレッキングは絶景の連続だった。
到着したビーチでは海水浴。クラゲに刺されたのも、今となっては笑える思い出。
奇跡のような楽しい出会いもあった。
それはエジプトのシワ・オアシスで、2021年の9月にカウチサーフィンでお世話になったモハメドとの再会。
彼もエジプトからヨーロッパを旅していて、ちょうど私がマルセイユに滞在する時期と重なって、彼もマルセイユにいたのでした。
旅をしていると度々感じるけれど、このような奇跡的な再会はどんな風に説明がつくのだろう。
偶然と呼べば偶然。それとも運命のような何かに導かれているのか。
マルセイユ滞在最終日には、私がお世話になっていたマルガリットと彼氏のサミュエルと彼の家族、モハメドに、彼の友人まで交えてのバーベキュー。
フランスで気に入ったのは、何といってもこの文化。
自宅に友人達を招いてホームパーティーのような機会がたくさんある。これはフランス南部ならではなのだろうか?
オープンで陽気なフランス南部の人々の気質がうかがえる。
モンペリエ -地中海に面した活気ある学生都市-
マルセイユを後にしてやってきたのは、モンペリエ。
ヒッチハイクで車に乗せてくれた人に、モンテリマールという別の街に間違えて連れて行かれたアクシデントがあったのも良い思い出。
もうずっと旅してるから、ちょっとしたトラブルなんかには全く動じずに、冷静に解決策を考える頭に切り替えることができるようになった。
ヒッチハイクは何だか禅の修行のようだ(笑)
モンペリエでホストしてくれたのはイラン出身のモハメド。
博士課程の学生として日々研究に勤しみながら、モンペリエにはもう1年以上も住んでいるのだとか。
モンペリエは大学が多くあり、モハメドのような学生がたくさん住む学生の街。
街中には若者のエネルギーで活気にあふれ、夜になると街の中心部のバーはどこも満席だ。
モンペリエは古くから学生の集まる街であったようで、何とモンペリエ大学の医学部はヨーロッパで最古の医学部だそう。
あの有名な予言者ノストラダムスもこちらの大学に在籍していたという。
モハメドが一緒に街を歩いていて教えてくれたのだけれど、モンペリエはパリを模倣してデザインされた場所が多くあるそう。
当時の市長がパリに憧れて、パリのような街にしたかったからだそうだ。
そのためにモンペリエのオペラ座は、パリのオペラ座にそっくり。
凱旋門を真似たモニュメントもある。
中世の面影を残す路地、緑のある大きな公園もあり、とても住みやすそうな印象を受けた。
街中にある芸術家による作品も、街歩きを楽しくさせる。
南仏を旅するなら、ふらっと立ち寄ってみても楽しい場所だと思う。
トゥールーズ -赤煉瓦が特徴的なバラ色の街-
モンペリエの後にやってきたのはフランス南西部にある都市トゥールーズ。
フランスでも4-5番目に大きい都市にも関わらず、街には穏やかな空気が流れていて、都市特有の慌ただしい雰囲気は感じなかった。
トゥールーズの街を歩いていてすぐに気づくのが赤煉瓦の街並み。
トゥールーズでは周辺で建築に適した石材が採れなかったが、レンガ造りに適した泥は豊富にあったため、赤煉瓦が街づくりに使用されたのだとか。
その赤煉瓦の街並みからトゥールーズは「バラ色の街」と呼ばれていて、他のフランスの都市とは異なる雰囲気を醸し出している。
午前中に街を歩いていると、広場や大きな通りでは青空市場が開かれていた。
フランスのこういう何だか開放的な雰囲気が好き。
またトゥールーズはエアバス社の本社と主力工場、ヨーロッパ最大の宇宙センターなどがあり、航空・宇宙産業が有名。街に住むほとんどの人々がその関係の仕事をしているのだとか。
「夜間飛行」、「人間の大地」、「星の王子様」などで知られる、私の好きな作家サン・テグジュペリがパイロットとして働いていた航空郵便会社「アエロポスタル」も、ここトゥールーズにあった。
またトゥールーズで気に入ったのが、大きなガロンヌ川が街中を流れている事。かつて多くの物資がこのガロンヌ川を経由して運ばれた。
川沿いにはベンチや広場などが整備されており、思い思いに時間を過ごす人々の姿。
夜になるとライトアップされた河川敷で、学生たちが楽しそうに集まる姿。
何だか京都の鴨川を思い出してしまった。互いのグループごとに均等に距離を置いて座っている姿とか(笑)
この街ではブルキナファソ出身のラミンの家に泊めてもらっていた。
憧れの西アフリカ、彼の故郷ももうすぐ訪れることになるかもしれない。
ピレネー山脈の麓でフランス文化と自然の美しさを満喫
トゥールーズを後にしてやってきたのは、ピレネー山脈の麓の村セギュス。
緑の多い山々に囲まれた、とても静かで落ち着いた場所であった。
この村を訪れたのはボランティアとして動物たちの世話を手伝うため。
わずか10日間ほどと短期間だったけれど、日本を訪れた事もあるベンジャミンとロハン、そしてルームメイトのイネスとラファエルが温かく迎えてくれた。
ここで犬と猫から、鶏、鴨、ウサギ、羊のお世話をしていたのだけれど、何と滞在中に犬のルルカが9匹の子犬を出産、子羊も1匹生まれ、イネスの妊娠も分かり、おめでたいニュースばかりの滞在だった。
昼食、夕食も毎日彼らと一緒に食べ、こちらは味噌炒めや和風パスタ、餃子、巻き寿司などを振る舞い、彼らはタルトやエスカルゴのパスタ、各種チーズ、ラタトゥーユなどを料理してくれた。
このように1ヶ所にしばらく滞在しながら文化交流できるのも、ワークアウェイを使ってボランティアとして滞在する魅力。
彼らと一緒に周囲の山に登りに行ったのも良い思い出だ。
セギュス村は国際的に有名な観光地(キリスト教の人々にとって)であるルルドの近郊にある。
ルルドは「奇跡が起こった街」として有名で、世界各国から巡礼者が訪れる。
その奇跡とは、
“19世紀中旬、川の畔へ薪集めにやってきた貧しい少女ベルナデットは、突然目の前に現れた聖母マリアからお告げを聞かされます。「泉へ行って水を飲み、顔を洗いなさい」と。指示された洞窟へ行き地面を掘ると泉が湧き始め、その水を持ち帰って周りの人に飲ませたところ、次々に病が治るという奇跡が起こりました。彼女はこの後も聖母マリアと何度も出会い、「罪をつぐなうことと、ここで行列をし、聖堂を建ててほしい」とのお告げを聞いたといいます。”
これが噂となり、今では行列が途切れることのない世界的聖地に。
ちなみにピレネー地方の入口にあるルルドは、世界的な巡礼地になる以前から軍事的に重要な場所として街が形成されていました。
その時代にルルドの中心だったのが、街の中心部にある小さな岩山にそびえるルルド城。
城内は博物館になっていて、そこからのルルドの全景を見渡すことができる。
ボランティア中の空き時間にはこうしてルルドの街を訪れたり、近郊の山でゆったり散歩したり。
そして休日には壮大なピレネー山脈をトレッキングしてきたので、それを次にご紹介したいと思います。
岩壁から流れ落ちる大迫力の滝 ガバルニーの大滝
まずご紹介するのはガバルニーの街から5kmほどの距離にあるガバルニーの大滝。
高低差は480mほどで、歩いて片道1時間半から2時間ほどの距離。
トレッキングの開始地点はガバルニーの街からで、街を出ると岩壁から流れ出る大きな滝が遠くに見える。
その滝を源泉とした川沿いの道を歩いていく。
トレッキングルートの序盤は木々に囲まれ、牛たちが放牧されている。
川には石造りの橋が架かっていたりと、写真映えする景色。
道中にはレストラン併設の山小屋もあり、家族連れでのピクニックをしている人々も多かった。
そしてこの山小屋まで来ると、ガバルニーの大滝はもう目の前。
ここからさらに滝へと近づいていく。
滝自体は大滝っていうほどの大きさではないけれど、落差は十分。
雨量が多い時期だと岸壁から無数の滝が流れ落ちるような光景になるのだとか。
本格的なトレッキングには物足りないけれど、ピクニック気分には丁度いいくらいのトレイルでした。
ピレネー国立公園で本格トレッキング テント泊で1泊2日
天気の良い日程を狙ってやってきたのは、ピレネー国立公園。
写真で見たヴィニュマール(Vignemale)の姿と周辺の絶景に魅せられて、付近をトレッキングしてみることにした。
ヴィニュマールの山頂はフランスとスペインにまたがり、標高は3,298mほどある。
私が歩いたのは、こんなルート。
- 1日目:登山口はPont d’Espana→ガウベ湖→Refuge des oulettes de Gaubeでテント泊と周辺散策
- 2日目 : Refuge de Baysseliance→グラセ湖やクイ湖→エストン湖→フリュイティエール駐車場
周辺の散策も含めると2日で35kmほどの距離を歩きました。
現地住まいの中国人カップルの車にヒッチハイクで乗せてもらい、登山口のPont d’Espanaへ。
トレッキング序盤は、森林地帯を登っていく。
川沿いを登っていくので、時折勢いよく流れ落ちる美しい滝を目にすることもできた。
しばらく続く登り道を歩いていくと、ヴィニュマールを遠くに見ることのできるガウベ湖へ到着。
レストランと山小屋も併設されており、犬を連れてピクニックを楽しんでいる人々も多かった。
太陽の光が湖に当たると、そこには美しい薄い水色が照らし出され、うっとりするような景色。
ガウベ湖を後にし、湖の湖畔を歩きながらヴィニュマール山の方向へと進んでいく。
しばらく歩いてから後ろを振り返ってみると、ガウベ湖が眼下に。
午後からは徐々に青空も広がり、ピレネー山脈の美しい風景の中を歩いてゆく。
上流からは勢いよく川に水が流れ、その恩恵を受ける周辺は緑に覆われている。
ここまで来るとヴィニュマール山の荘厳な岩壁がより迫力をもって目に入ってくる。
その麓には氷河があり、何て素晴らしい山なのだろうか。
まだ日が暮れるまで時間があったので、西側の峠道を登りスペイン側のピレネー山脈を眺めに行くことに。
ピレネー山脈はフランスとスペインの国境沿いに位置しているので、両国を行き来しながら何日もトレッキングすることも可能。
峠道から戻り、キャンプ地に良さそうな大きな岩に囲まれた場所にテントを設置。
ここなら強風からテントを保護することができる。
近くにある山小屋で飲み水を補給し、初日の山行は終了。
何て素晴らしい景色を楽しめるキャンプ地だろう。これだからテント泊は楽しい。
日が暮れるまで外で夕焼けに染まるピレネーの山々の風景を眺める。
徐々に冷たくなる風を感じながら、自然が織りなす美しさにため息さえつきながら。
翌朝の早朝。日の出とともに起床。テントを片付けて、歩き始める。
2日目はアップダウンを繰り返しながら20km以上の距離を歩くハードな日程。
暗い空が少しずつピンク色に染まる様子に感動しながらトレッキング開始。
まずはキャンプ地から標高2700mある峠道を越えて、Refuge de Baysseliance(山小屋)を目指す。
早朝の大気は涼しくて、シーンと張りつめるような感じ。体も軽い。
しばらく急登を登り続けると、後ろには初日に歩いたガウベ湖が遥か遠くに見える。
峠道の山頂からの景色。
西側には、小さな湖越しに最初の目的地の山小屋が見える。
山小屋からは少し谷間を下り、再び次の峠道を目指して登る。
どこまでも続いているような壮大な風景は、疲れまで吹き飛ばしてくれるかのよう。
グラセ湖の方向へのトレッキングルートは、それほど整備されておらずトレイルを見つけるのに少し苦労した。
ルートから外れすぎないように慎重に峠道を登りきると、またしても絶景が迎えてくれる。
違う角度から眺めるヴィニュマール山に、反対側には2つの湖が美しい風景。
この峠道を越えると後は山道をほぼ下るのみ。
地図で確認したところ、多くの湖が道中にあるようで、どんな風景が道受けているのか楽しみだった。
このルートは人気のあるルートではないようで、ほとんど他の登山者に出会わなかったのだけれど、絶景の連続だった。
次から次へと姿を現す美しい湖の連続に何度も立ち止まる。
2つの峠道越えの後の疲れを両足に感じ始めた頃、ようやくエストン湖が眼下に見えた。
エストン湖まで辿り着くと、もうゴールは近い。
エストン湖で少し休憩し、この絶景のピレネー国立公園に別れを告げながら下山していく。
岩場がちだった風景から、再び緑に覆われた風景へと変わる。
このトレッキングが終わる事を寂しく思いつつも、すでに温かいご飯とシャワーが恋しい。
トレッキングを終えヒッチハイクで滞在先まで戻る道中。
生粋の地元のおじさんが拾ってくれた。
「時間があるんだったら俺と飲んでいけ!」と地元のバーの誘ってくれると、ビールやワインやハムのセットまで奢ってくれた。
こんな幸運な出会いに支えられながら旅を続けられることをありがたく思うとともに、この受けた愛情を少しでも返しながら旅を続けたいと思う。
おわりに
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