ラダックの旅 ストックカングリ6153m登山への挑戦

ストックカングリBCにて

ラダックのリッキル村でホームステイの手伝いをし始めてから1ヵ月。

村の裏手にある名もない裏山(4500m)を登ったり、7日間の近隣の村々を巡るトレッキングもしてみたものの、村から見える6000m級の山々を見ては、「滞在中にいつか行ってみたいなー」と思う日々。

そんなときに以前にも数日滞在してくれた馴染みの旅人が再びやってきた。

オランダ出身のリコとスウェーデン出身のソフィア。

そして私とホストのスタンジンを誘って、「せっかくラダックにいるんだし、みんなで一緒にストックカングリ(6153m)に登りに行かない?こんな機会逃したら二度とないよ」

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ストックカングリ挑戦へ -レーで買い出し-

時期は6月の初旬。

この時期はようやくマナリからレーへの自動車道が開通し、ラダックを訪れる旅行者の数がようやく増え始める時期だ。

当然まだ登山シーズンではないので、ベースキャンプがオープンしているかどうかもわからない。

念のためにスタンジン(ホームステイ先のホスト)がストックカングリへ登頂するためのベースキャンプがオープンしているか電話で確認してくれた。

「今年はもうベースキャンプの営業を開始してる?」

「まだ公式にはオープンしてはいないけど、来るなら準備しておくよ」

持つべきものは友人。

まだ登山のシーズンは始まっていないが、ありがたいことに到着するころまでには準備しておいてくれるらしい。

どうやら今シーズン最初のベースキャンプのゲストになりそうだ。

トレッキングスタート地点 ストック村

まずは登山に必要なものを揃えるためにラダック一番の都市レーにやってきた。

最初にストックカングリに登頂するためには許可証が必要となるためそれを入手。

次は登山に必要なものを買い出しする。ストックカングリは標高6153mもあるため、温かく、防水、防風の登山に適した衣料品を揃えないと。

私は大抵のものは持っていたが、リコとソフィアは冬用のジャケットさえ持っていないので、ここで全て揃えないといけない。

ストックカングリ ショルダー 5500m地点

レーにはたくさんの中古衣料品店があり、そこでは日本や韓国、ヨーロッパからの中古衣料品が格安で購入できる。

探すと大抵のものはあり、必要なものは問題なく揃ってしまった。

雪上を歩くので、雪に反射した日光から目を守るためサングラスを購入。

ユニクロのヒートテックのようなタイツ。耳を寒さから守るためのヘアバンド。ヘッドライト。スキー用の手袋も購入。

大量のエナジーバーと食料も買う。

ストックカングリ登山1日目

ベースキャンプ以降必要となるスノーシューズとアイゼン、ピッケルはストックカングリベースキャンプでレンタルできるようにした。

テントも自分たちの為に設置してくれるらしいから、テントも持っていく必要なし。

レーで全部借りていくこともできるが、そうするとベースキャンプまで自分たちで運ばなければならないのが大変。

今回は馬もロバも使わずに自分たちで荷物を運ぶので、極力荷物は少なめにしたかった。

こんな登山前日に登山道具をかき集めている、とてもじゃないけれどプロフェッショナルとは言えない3人組が6153mに到達できるのか。

クレパス地帯の前で、アイゼンを装着する

ストックカングリベースキャンプへ

登山開始当日ゲストハウスを出発し、タクシーでストック村まで行く。

ストック村がストックカングリ登山の出発地である。

ストックカングリ頂上までのルートはこちら。

登山のスケジュールはこんな感じ。

1日目: ストック村→モンカルモキャンプ(4480m)
2日目: モンカルモキャンプ→ストックカングリベースキャンプ(4980)
3日目: ストックカングリベースキャンプ→頂上(6153m)→ベースキャンプ
4日目: 下山

スタンジンが言うにはストックカングリ登頂成功には、高所順応がしっかりできているかが重要なポイントだという。

私はすでに1ヵ月以上も標高3750mの村で暮らしているし、リコとソフィアも2週間ラダックにいるので大丈夫なはず。

まずは1日目ストック村からモンカルモキャンプへ向かう。

急な坂道などはなく、谷の間のなだらかな道をゆっくり登っていく。

ストック村から谷間に入っていく
谷の両側には削り取られたように切り立った斜面が

ラダックの山々の中を歩いていると、どこか地球の果てのとんでもない秘境に来たように錯覚することがある。

ただ剥き出しの自然の中に自分がポツンとあるような気分になる。

ゴーゴーと流れる川、そそり立つ山、圧倒的な自然の前に、自分の存在の小ささを思い知らされる。

ラダック特有の荒涼とした山の風景
自然よって作られた、面白い形の山々

しばらくそんな事を考えながら歩いていると、

リコが「あ!面白い形の岩がある。ここでロッククライミングしてみたい。ちょっと登っていこうか?」

「あほか!これからストックカングリに登るのにしょうもないところでケガなんかしたらどうすんねん」

でももうそんなこと聞かないで登り出してるし。

気に入った山に登りだすリコ

無事にリコがアホなロッククライミングから帰ってきて、また荒涼とした大地を歩き出す。

谷間を抜けて、なだらかな山々と青空が顔を出した。

ここまで来ると、モンカルモキャンプまではもうすぐ。

谷間を抜けると、モンカルモキャンプはもうすぐそこ

歩きにくいゴツゴツした大きな石の上をしばらく歩いていくと、モンカルモキャンプに到着。

持ってきたツナ缶やインスタントヌードルなんかを食べて、体を休める。

ちなみに食料を持ってきていない人はここで、簡単な食事やチャイ、コーヒーぐらいなら頂けます。

目を遠方に向ければ、ここから明後日に登頂予定のストックカングリが見える。

モンカルモキャンプに到着

キャンプ地のすぐそばには川が流れていて、飲み水はそこから補給できる。

リコとソフィアはどうしても体を洗いたいらしく、

「風邪をひくんじゃない?」と言っても、「これが体にいいんだ!」とか言って、極寒の川の水で水浴びをしていた。

今夜は満点の星空を眺めたり、テントの中でトランプをしたりして楽しんだ。

一晩明けて、今日はモンカルモキャンプからベースキャンプまで標高を上げていく。

たった500mの標高差しかないので、ストックカングリを前方に眺めながら、なだらかな道をテクテクと歩いていく。

ストックカングリベースキャンプに向けて出発

標高も4500m以上と高くなってきたので、谷間にはまだ雪が残っている。

標高もかなり高くなってきているはずだが、高所順応ができているのか体に変化は感じない。

谷間にはまだ雪が残っている

モンカルモキャンプで出会った人々が、ちょうどベースキャンプまで荷物を運んでいくみたいなので、少しお金を払って自分たちの荷物も運んでもらった。

ベースキャンプに馬を使って荷物を運んでいく人々

背中の重い荷物がなくなって、体は飛ぶように軽い。

気がついたらいつの間にかベースキャンプに到着した。

高山に来たときに感じる特有の信じられないような静けさに、ツーンと張りつめた空気。

風の音でさえ、どこか遠くから聞こえてくるような感じがする。

ストックカングリベースキャンプ到着

ベースキャンプにはすでに何名かの先客がいて、昨日は悪天候で頂上まで行けなかったとか、クレパスや積雪の状況を教えてもらった。

今夜はストックカングリベースキャンプ(4980m)で一泊、と言っても真夜中には起きて、出発しなければならない。

頂上までは8時間程かかるらしく、頂上には10時頃には着いていたいとのこと。

下りに5時間かかるとして暗くなる前に帰ってくるには余裕を持って真夜中に出発ということか。

明日の天気はどうかなー?本当に6000m以上の山に登ることなんてできるのか?

頂上に立つ自分の姿を想像しながら寝袋にくるまり、ごろんとしているうちに眠りに落ちた。

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ストックカングリ登頂

さて時計のアラームが鳴って目を覚ますと、辺りは真っ暗になっている。

ベースキャンプのチームは夕食を作ってくれていた。

今日は体を動かすためにエナジーが必要だ!登山前にこれでもかという程にお腹をいっぱいにしておく。

真夜中に出発

登頂前に我らが登山ガイドスタンジンからサミットアタックに向けて、いくつか注意事。

1: 例え汗をかいて暑いと思ってもジャケットは脱がないこと、体を冷やす原因になる。
2: 頭痛や吐き気など体に異変を感じたら、手遅れになる前にすぐに知らせること。
3: ここから先は死ぬ危険もあるので、かならず登山ガイド(スタンジン)の言うことを聞くこと

スタンジンの真剣な表情に、今日ついに6153mの山の頂に立つんだという気持ちが高まってきて、いざ出発。

満点の星空と輝く月を眺めながら、ゆっくりと斜面を上がっていく。

スノーシューズを履いているので、普段よりもかなり歩きづらい。

真っ暗なので周囲の景色は全く見えないし、どこを歩いているのかもわからない。

ただライトの光を頼りに、スタンジンについていく。

徐々に夜が明けてくる
明るくなってきて、山の稜線がはっきり見えてきた

徐々に夜が明けて、周囲の景色が見えてきた。

周囲は雪を抱いた山々に囲まれている。心なしか空気も薄いような感じがしてきた。

ここからはついにアイゼンを着け、ロープを互いに結び、クレパス地帯と雪の積もった急斜面を登っていく。

雪面とクレパス地帯を登っていくので、アイゼンを装着しロープを互いに結ぶ
ロープを互いに結ぶ

どうやら岩場に雪が積もっているらしく、たまに足がズボッと深く溝にはまってしまうこともある。

5200mを越えるこの標高の高さで、斜面を上がるのはかなりのエナジーを使う。

少し登るとすぐに息が切れるので、「次はあそこまで登ろう」と目標を決めて徐々に登っていく。

斜面を登っていく
登ってきた斜面を振り返る

どこからついてきたのかわからないけれど、後ろからは犬が追ってくる。

どこに住んでいるのか知らないけれど、標高5200mまで斜面を登ってついてきた!

標高5200mまでついてきた犬

犬と別れ、ヘトヘトになりながらも、さらにさらに斜面を登っていく。

急斜面を頑張って登る
もう別世界の景色
斜面を登って気持ちよい疲れ
まるで探検隊のよう

息を切らしながらもついにショルダーと呼ばれる5500mの地点までやってきた。

ここでリコが後ろでかなり遅れている。

どうやら体の調子が良くないようだ。少し吐き気も感じるらしい。

スタンジンと相談して、リコはここから先は一緒には登らないことにした。

この中で一番タフなリコなのに、ここでリタイア。高山症ってわからないもの。

私はかなり疲れているのは間違いないが、頭痛や吐き気はない。

この先はさらに危険な個所を登っていく。

本当にこんな場所歩くの?滑ったら死ぬよね?という感じの崖っぷちも歩いていく。

狭い稜線を慎重に登っていく
もうへとへと
もう少しで頂上

もう本当に数メートル登ったら一気に疲れる感じで、体がすごく重い。

ひどくはないけれど、少しだけ頭痛のような症状を感じる気もする。

でも周りの今まで見たことがないような美しさを越えて神々しい景色を見ると、感動で今この場所にいる幸せをかみしめる。

まさに絶景
神々の住む場所

雪がちらつく中、重い体に鞭を打ちながら頂上になんとか到達!

やったー!標高6153mまできたー!

ここまで到達できるか半信半疑だったけれど、達成できた!

いつも思うけど、できるかどうかわからない事に挑戦して、達成したほど気持ちいい時はない。

もう感動ですこし涙ぐんでた。

ここまで連れてきてくれてありがとう!

頂上にて ソフィアとスタンジン
頂上にて ソフィアと私

かなり寒かったので、頂上には少しだけ滞在して下山開始。

登りで体力をかなり消耗したので、下りはすごくきつかったです。

翌日はレーに戻って、頂上到達を祝った。

好きなもの食べて飲んで。この挑戦は自分に誇れる良い思い出になった。

おわりに

本当に6153mの山に登るなんて、行けるかどうかわかりませんでしたが挑戦して良かった。

誘ってくれたリコとソフィアに、ガイドをしてくれたスタンジンに感謝感謝です。

この山は6000m級の山にしては、比較的簡単に登れる山らしいです。(かなりきつかったですけどね)

ラダックに来て、何かに挑戦してみたい人は高所順応をしっかりして、ぜひともストックカングリに挑戦してみたください。

感動すること間違いなしです。

この後ラダックの奥地ザンスカールにもトレッキングに行きました。旅の続きはこちら

ラダックの旅 絶景の秘境ザンスカールを歩く

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コメント

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