ケニア旅の最後のハイライト。それはケニア山国立公園でのトレッキング。インド洋沿岸を旅していた時に出会ったセルビア人のネナッドと意気投合し、ナイロビから登山の拠点となるナニュキへ。
アンデス山脈振りとなる久しぶりの本格的な高山での登山。2泊3日で最高到達地点は4985m。
山頂のポイント・レナナでのご来光、次々と目に飛び込んでくる絶景に終始感激しっぱなしのトレッキングになりました。
ケニア山国立公園とは?個人手配トレッキング準備情報(2021年8月時点)
まずはケニア山国立公園について少し説明を。ケニア山国立公園は、キリマンジャロに次いでアフリカ第二位のケニア山(標高5199m)周辺の動植物の保護を目的として、1949年に指定された国立公園。
ケニアのほぼ中央部で赤道直下にありながら万年雪があり、氷河まである。後ほど写真でもご覧いただけますが、切り立った岸壁、高山地帯に点在する湖、高原地帯、バッファローやゾウの住む森林ががあり、多彩な自然環境を持つ山。
登山のベースとなる街はナニュキや、ナルモロ、チョゴリアなど登山ルートによって変わりますが、今回我々がベースにしたのはナニュキ。ナイロビから北に200kmほど離れた街です。
ケニア山国立公園でのトレッキングには様々なルートがあります。その中でも我々が歩いたのは、初日にシリモンルートから登山を開始し、二日目に山頂の周回コースを経て、三日目にチョゴリアルートから下山するというコース。
地元の登山好きの人々に尋ねてまわった所、このシンプトン・チョゴリアルートが一番景色が良くて楽しめるとの事。そこに贅沢にも山頂周回も付け足した、体力的にキツイ計画(通常は5日かけて歩くルート)。
個人手配で準備が必要な事
- ガイドの手配
2021年8月時点では、登山グループは資格を持ったガイドとでないと国立公園内に入場できません。グループに一人はガイドを見つけましょう。我々はナニュキで手配しました。(相場: 2000円-3000円/1日) - 国立公園までの交通手段
国立公園まで直接行く公共交通手段はありません。入り口までタクシーを手配するか、ミニバスで最寄りの村まで行き、そこからバイクタクシーなどで入り口まで行けます。我々はナニュキからオールド・モーゼス・キャンプまでタクシーを手配し、チョゴリアゲートから下山時は、チョゴリアまでヒッチハイクしました。
タクシー価格相場
・ナニュキ→シリモンゲート 1500円
・ナニュキ→オールド・モーゼス・キャンプ 3000円
・チョゴリアゲート→チョゴリア 4000円 - 国立公園内宿泊先
テント泊ならKWS(Kenya Wildlife Service)指定のキャンプサイトがあります(2000円/全日程)。
国立公園内には山小屋もあります。我々が泊まったシンプトン山小屋では、ドミトリータイプの部屋でマットレスが敷かれたベッドありました。トイレも完備。キッチンはなし。(2000円/1泊) - 登山道具の手配
ナニュキでレンタルできます。ガイドに頼めば全て準備してくれます。テント500円/1日、寝袋400円/1日、調理器具など。交渉次第です。ナニュキのマーケットで、中古の服や靴などが格安で売っているので、そこで購入するのも一手です。 - 食料の手配
ナニュキには2軒ショッピングモールがあり、必要なモノは大体揃います。 - ナイロビで手配すべきもの
日本/ヨーロッパタイプ(EN417)の登山用ガスです。ナニュキでは見当たりませんでした。ナイロビのGoing Outdoor(Galleria Mall / Two Rivers Mall内)で見つかります。私はイワタニプリムスのガスバーナーに、そこで購入したコールマンのガスを使用しました。
ケニア山国立公園に関して質問があれば、コメント欄やツイッター、インスタグラムでメッセージください。できる限りお答えしたいと思います。
それでは肝心のトレッキングへ!
トレッキング初日: シリモンルートで登山開始 シンプトンキャンプ(4200m)へ
個人手配で色々と準備で大変だった後、遂にむかえたトレッキング初日の朝。食料や調理道具を含んだ決して軽くないバックパック。
シンプトン山小屋に二泊するので、テントを担がなくていいのが不幸中の幸い。ポーターは雇わず自分達の分は自分たちで運ぶスタイル。
朝7:00、ガイドのケビン( 今では仲のいい友達 )と今回の登山の相棒ネナッドとナニュキの街で集合。手配しておいた車で一気にオールド・モーゼス・キャンプ(標高3340m)へ直行。
ここからシンプトン・キャンプ(標高4200m)まで登るのが初日のトレッキング。
通常は高所順応のために一日目から4200mまでは登らないのだけれど、日程と金銭的な理由により若い体力にまかせて一気に。
通常は五日かけて歩くコースを三日で歩いているのでめちゃくちゃです。この記事の日程は当てにしないでください。景色の写真だけ楽しんでもらえたら(笑)
オールド・モーゼス・キャンプから、しばらくはなだらかな登り道が続きます。すでに標高3000mを越す高原地帯なので、限られた植物しか見当たらず。
個人的には南米エクアドルやコロンビアに広がるパラモと呼ばれる高原地帯と似ているような。どちらも赤道付近の高原地帯という共通点もあるし。
シリモンルート上には、上記の写真のようにいくつもの川を越えて行くので水の補給には困りません。
食料や調理道具に加えて、大量の水を運ばなくてもいいのは助かります。
出発から1時間30分。少し空が曇ってきました。3日間通じて、午前は晴れで午後は曇りだったので、朝早くからトレッキングを開始されることをオススメします。
緩やかなアップダウンを繰り返し、下の写真のような谷に沿ってケニア山山頂部へと近づいていきます。
上の写真で、もしかしたらユニークな植生に注目された方がおられるかもしれません。
ケニア山国立公園の植生の特色の一つは、 ジャイアントセネシオやジャイアントロベリアなどの巨大な草本植物が至る所で観察できるところ。
下の写真のように、それはもう大量に。
歩き始めて4時間ぐらいが経過した頃。標高4000mほどの高さに位置する、大きく広がった谷を歩いていきます。
やっぱり4000mを越えてくると、息切れをするのが早くなります。少しずつ休憩しながら、ゆっくりと。
この辺りを歩いていると、時折甲高い動物の鳴き声が聞こえてきます。
その正体はハイラックス。岩の上からこちらを観察し、威嚇してくる。近づくと岩陰に隠れる。かわいい。
なんとトレッキング中に白色のハイラックスも発見。これはかなり珍しい???
最後の急登を登り切り、出発から6時間後にようやくシンプトン・キャンプの山小屋に到着。
ここシンプトン・キャンプからの景色も素晴らしい。山小屋の後ろには壮大にそびえ立つケニア山の山頂部。
山小屋の中にはマットレス付きのドミトリーの部屋が数部屋。食事をとれるテーブルや椅子など簡単な設備が。
到着した瞬間、準備してきたガスでお湯を沸かし、コーヒーやホットココアで一服する至福の瞬間。週末という事もあり、山小屋はたくさんの人で賑わっていた。
お菓子を食べ、ココアを飲みながら外の景色を眺めると、分厚い雲が山頂部を覆いつくす。肌に何か冷たいものを感じたと思ったら、みぞれが降ってきた。山小屋に早めに到着しておいて良かったと思った瞬間。
夕方になると、曇り空から徐々に晴れ間がのぞいてくる。
ガイドのケビン曰く、「雨が激しく降った日の翌日は、すっきりと晴れることが多いんだ」との事で、明日に期待が膨らむ。
明日は朝の3:00に山小屋を出発し、山頂のポイント・レナナ(4985m)でご来光を見る予定。
そのために午後7:00にはベッドに潜り込むが、他の登山客の話し声や標高が影響しているのか全く眠れず。
おそらく2時間ぐらいしか眠れずに、翌日の3:00を迎えた。
二日目: 山頂のポイント・レナナでご来光と山頂周回コース 11時間歩き続ける
ほとんど眠れずに迎えた午前3:00。すでに疲れ気味の体を熱いコーヒーで無理やり起動させる。
外はまだ真っ暗闇で寒い。ヘッドライトを点灯させて、どこを歩いているのかも分からない急登をゆっくり登っていく。ここはガイドのケビンだけが頼り。
手袋はしているけれど、手が寒い。冬用の登山靴じゃないので足も寒い。
それでもガイドのケビンのペースに合わせながら、超ゆっくりペースで登っていく。
そして午前6:00頃、ようやく水平線の向こうで空の色がオレンジ色に変わってきた。
山頂についたのは我々が最初のよう。暗闇を照らし出す光が、徐々に周囲の美しい風景を明らかにしてゆく。
360度のパノラマビュー。起伏にとんだ地形。数々の湖のどれもが素晴らしく美しい。
だが標高5000mの冷たい強風で指が冷たくて、冷たくて、シャッターを切るのも辛い(笑)
そして、空の遠くから太陽が顔を出す。
ポイント・レナナから、目の前に見えるネリソン(5188m)も太陽の光によって、色が変わり素晴らしく神秘的。
午前3:00に起きると知らされた時には、「絶対いや」と思ったけれど、こんな景色を見ることができれば、そんな努力何て小さなもの。
さて、まだまだ終わりではありません。ここからは何と山頂部周回ルートを歩き始めます。
ルートはこのような感じに、山頂をクルっと。アップダウンがめちゃくちゃ激しく、4000m以上の標高で一気に下って登ってを4回も繰り返す、タフなルート。
絶景の連続だけど、とにかくキツかった。
まずは、頂上のポイント・レナナから一気にオーストリア山小屋に向かって、岩場を急降下。ロープが整備されているほど急で危ない。
オーストリア山小屋からは、固い砂場でめちゃくちゃ滑りやすい地面で何度も滑りながら下って行く。しかし横目には素晴らしい山岳風景。
谷の底まで下りきったと思ったら、アメリカン・キャンプを経由して、また急登を登る。
景色が素晴らしいのが唯一の救い。
アメリカン・キャンプから急登を登って、目の前に広がるのは絶景の湖「Hut Tarn」。近くにあるもう一つの湖と合わせて「Two tarn」と呼ばれることも。
迫力ある山の風景と湖の色が素晴らしい。個々の水はそのまま飲めてしまう程の純水。次はこんな場所でキャンプしてみたい。
こちらは同じ湖を違う角度で。
ここから歩くにつれて絶景の湖が連続で登場してきます。
続きましては空に浮かんでいるような湖が登場。
そして湖に何色もの色があるかのような「Emerald Tarn」。
こんな絶景を眺めながらも、下の写真のような岩場をアップダウン繰り返してます。
体力的にめちゃくちゃしんどいです。過去にこれほど4000m以上の標高でアップダウンを繰り返したことなんかなかった。
次の峠道を登りきった場所から見えるのは2つの黄色っぽい色をした湖「Husberg tarn」。
次に登る場所は、下の写真の右上の砂地になってるところです。信じられます?こんなアップダウンを何回も繰り返すなんて。
急登を下った場所での景色はこんな感じ。あ~もう登りたくないって思いますよ(笑)
下の写真は、先ほどの砂地に向かって、砂地を登っているところ。
もう写真からも疲れがにじみ出ているような気がする。
こんな風にして絶景の中を歩き回った二日目。
朝の3:00から歩いて、再びシンプトン・キャンプに戻ってきたのは昼の2:00。何と11時間も歩き続けるという(笑)
体力に自信のある方は、ぜひケニア山山頂周回コースもどうぞ。
山小屋についたとたん、ホットココア飲んでベッドに倒れこみました。
三日目: 噂通りの絶景 チョゴリアルートで下山
あまりもの疲れのせいか、昨晩と違って十分に睡眠がとれた二日目の夜。
昨日の疲れもあって筋肉痛を感じるけれど、体力的には回復しているよう。
朝の6:00に起床して外に出ると、朝焼けに佇むケニア山の美しい風景が。
こんな風景とも今日でお別れ。チョゴリアルートから下山の三日目です。
名残惜しいような気持ちを抱えながら、ゆっくりと足を進めていく。今日も20km以上あるく長い一日。
朝から曇りがちだったので天気を心配していたのですが、きれいに晴れたケニア山の頂上の景色を最後にも見せてくれました。
三日目の今日は昨日ほどのアップダウンはなく、下って行くルートが多い。下って行くルートって飽きてしまう事が多いのですが、このチョゴリアルートは一味違う。
登山者を飽きさせないような絶景が続くのです。まず現れた湖が「Simba tarn」。誰かキャンプしている。
そして下の写真のような風景の中をどんどんと下って行きます。目の前に広がる壮大な風景と切り立った深い渓谷に、下るのにもワクワクします。
こちらの湖は「Hall Tarn」。近くに簡易の山小屋もあって、チョゴリアルートから登ってくる場合は、ポイント・レナナに登るための拠点ともなるキャンプ地です。
鏡張りになった湖が素晴らしく、ここからもまだケニア山の山頂部が見渡せます。まさに絶景の連続。
ここからしばらく歩いていくと、またしても素晴らしい絶景ポイント。
「Michaelson Lake」と周囲の山岳風景。この湖はケニア山国立公園内で最も深い湖で、トラウトなどの魚も釣れるそう。
ケニア山は場所によって多彩な風景を見せてくれるのが魅力の山。
下の写真はチョゴリアルートを下って行くにつれて近づいてくる、大地にぽっかりと空いた渓谷美。
下るにしたがって遠くなっていくケニア山の山頂部。
振り返り振り返り名残惜しく眺めながら下って行くけれど、また戻ってくることなんてあるのだろうか?多分ないと思う。
今この瞬間だけの風景。
ケニアの旅自体がもうすぐ終わるので、トレッキング自体が終わる寂しさとも重なって何だか不思議な気持ち。
もうケニアは十分かなと思っていた時期もあったけれど、やっぱり今はもっと長く滞在したかったような気も。
そして何となく再びケニアの大地を踏むような予感がしている。
2ヵ月半もの間滞在したケニア。次はエジプト。
おわりに
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