南アフリカを2ヵ月ほど旅していた私は、どうしても立ち寄りたい近隣の国があった。
その国の名はレソト。南アフリカに囲まれた小さな国。
「天空の王国」と呼ばれていて、一番低い場所の標高でも1400mもある山岳地帯。
写真を検索してみると美しい山々におもしろい形をした昔ながらの建物。
民族衣装として毛布を体に羽織った人々が、毛布なのにかっこよく写っている。
ダメだ。気になる。これは行かないと。
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レソトっていったいどこ?
さてみなさんはレソトという国名自体聞かれたことありますか?
私自身南アフリカに来るまで、その存在さえ知りませんでした。
レソトはその周囲を南アフリカに囲まれた小さな内陸国です。
国土の標高は一番低い場所で1400m以上で、平地は南アフリカとの西側国境沿い以外にほとんどなく、山岳地帯が広がっています。
ちなみに下部の地図が私がレソトで旅したエリアです。
南アフリカから国境を越えレソトに入国しました。
南アフリカにからレソトに到着するとのんびりと平穏な空気が流れていた。
個人的な意見だけど、南アフリカの人々の誰もがお互いを信用していないような、少し緊張感がある雰囲気とは大違いだ。南アフリカは犯罪率が高いから。
南アフリカから出国して、レソトに入国するときもすごく簡単だった。
「どこから来たの?何日間滞在したいの?」
「3週間あれば十分です」
「じゃあ1ヵ月間の滞在許可にしとくわね。この日までに出国してね。」
これだけのやり取りでスタンプが押されて終わり。
こんなに簡単でいいの?
これがレソトの国旗です。
青色が空と雨、白が平和、緑は豊かな国土と繁栄を意味するそうです。
真ん中のシンボルは、レソトの伝統的な帽子です。
レソトに住む大多数の人々はソト族の人々。レソト人のことを単数形でモソト、複数形でバソトと呼びます。
だからレソト人達のかぶる帽子ということでバソトハットです。
バソトハットはこんな感じ!
アフリカ大陸で経済的に一番発展している南アフリカに囲まれたレソトですが経済状況は良い状況ではありません。
失業率は40%以上で国内での就職は難しく、南アフリカで出稼ぎをしている人が多いです。
現地の人々が話す言葉ですが、母国語であるソト語と英語の両方が公用語とされています。
ほとんどの人が英語を流暢に話すのでコミュニケーションには困りません。
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ちょっとシャイだけどフレンドリーな人々
私が滞在中お世話になっていたのは、マフェテンという首都マセルから80km程南にある町。
スーパーマーケットもあるし、青空市場もあるし、住むのに便利な町です。
通りを歩いていると、向こうから声をかけてくるということはあまりないのですが、こちらから声をかけると彼らの好奇心が爆発します。
「どこから来たの?」「何をしにレソトに来たの?」「レソトは好きですか?「レソトのご飯はおいしいですか?」
「チャイナ!チャイナ!ジャッキーチェンだ!」
もちろん彼らに中国人と日本人の区別ができるはずもありません。
そして後で気づいたのですが、レソトには意外と多くの中国人が住んでいるのです。
彼らは主にレソトで卸売業をやっていて、そこそこ大きなショップのオーナーはほとんどが中国人の方々でした。
だからレソトの人はアジア系の人を見るととりあえず中国人だと思います。
一部の人以外は日本がどこにあるかも知りませんし、中国と日本の違いも曖昧でした。
「日本って中国の一部じゃなかったの?」こんな感じです。
まあ、アフリカから離れた遠い遠い国ですしね。そうですよね。
日本人で、何人の人がレソトという国を知っているのか。
ただレソトのみなさんも日本車ブランドは良くご存知でした。日本製品やっぱりワールドクラス(笑)
言葉が通じなくても、トヨタ、ホンダ、スズキで会話が成り立つこともありますからね。
そしてなぜか日本のサッカーJリーグのチームを知っている人もいます。
なぜかというとスポーツ賭博をやっていてチーム名だけを覚えているんです。
鹿島アントラーズや浦和レッズが人気だそうです(笑)
レソトの伝統的な建物と食べ物
レソトの人々が住む伝統的な家は独特のかわいらしい形をしています。
田舎の村々に住む人々は、このように円形に石やレンガを積み上げた萱葺き屋根の家に住んでいます。
ここに外から石と石の隙間を埋めるように泥を塗りつけて防寒対策している家もあります。
それにしても形がかわいらしくて好き。
そして、そんなレソトの人々に欠かせない食べ物がパパです。
パパはトウモロコシの粉を沸騰したお湯に入れて、モチモチになるまでかき混ぜながら煮て作ります。
焦げやすいので、焦がさないように注意。
パパは日本人にとってのお米のような存在です。
味はあまりありませんが、ふわふわモチモチした食感がたまりません。
そしてこのパパとモロホと呼ばれるキャベツや青菜の千切りを調味料と油でふにゃっとするまで炒めたものを一緒に手づかみで食べます。これにお肉がつくとご馳走です。
町では鶏やソーセージを焼いて売っている店もあります。
焼き鳥をオーダーするとパパとモロホも、もれなくついてくる。
滞在中お世話になったNGO「Hands of life」
そんなマフェテンで私は「Hands of life」というNGOを手伝いながら滞在していました。
「Hands of life」は、サイクリングを通して家庭内で問題を抱える子供たちに安心・安全な場所を提供することや、レソトで深刻な問題となっているHIVに関して教育することを目的に活動するNGOです。
NGOを経営する若きリーダー”ツェポ”は自身の子供時代の経験から、レソトに住む子供たちが伝統や慣習に抑え込まれすぎることなく、希望をもってのびのび生きられればいい。子供たちがここで活動する間だけでも自由な表現ができればいいと語っていました。
ここに来る子供たちは本当に毎日の活動を楽しみにしていて、自転車の修理から事務所の掃除まで夕方遅くなるまで活動していました。彼らはすでに自転車のパーツをゼロから組み立てられます。すごい!
ボランティアといて働くこともできるので興味がある方は、下記のURLまで連絡お願いします。
Hands of life URL:
楽園へのゲート マレアレア
マフェテンに滞在していたある日、「NGOのメンバーで旅行をしよう!」ということになりました。
そこでスタッフおすすめの場所がマレアレア。絶景の場所みたいなので楽しみです。
車をチャーターしてみんなで出発。
後ろの荷台席が特等席だぜ!
マレアレアまではマフェテンから60kmぐらい。
のーんびり後ろの荷台で風を感じながら、のどかな風景の中をいく。
そしてマレアレア村の入り口まで来ると、「Gate of Paradaise」とサインがある。
楽園への門だって!?サインから先はちょっと坂になっていて、まだ全景はわからないが楽しみ!
そして、
楽園というにはちょっと緑が足りないけど、のどかな風景と背景の山々が美しい!
マレアレアの村の入り口までは道路が舗装してありますが、そのあとは未舗装。
道路もでこぼこなので2輪駆動でも大丈夫だけど、4輪駆動の車だと安心。
空が広いなー!
そしてさらに奥地にきれいな滝もあるらしいのでレッツゴー。
車から降り、徒歩で急勾配を下っていくと、
ちょっと水量が少ないけどきれい!
行った時期は1月末だった。時期が違うともっと水量があるのかな?
滝つぼで泳いだり水浴びした後は、
日光浴でリラックス。子供たちおおはしゃぎでした。
でも意外なことにレソトの人も子供たちも泳ぎ方知りません。
こんなに雄大な自然があるのになぜ??
セモンコン村でトレッキング・キャンプ
マフェテンでしばらく滞在後、滞在先にスペイン出身の新たな旅人が来ました。
彼の名はエカインで南アフリカで博士号の取得のために研究しているそうです。
彼と意気投合しセモンコン村をトレッキングのために訪れることにしました。
セモンコンではアフリカ南部で最大の落差があるマレツニャーネ滝があり、トレッキングで訪れることができるらしい。
レソトに来たからにはトレッキングもしたかったし、キャンプもやってみたいということで、食料を買い込み早速車でセモンコンへ。
セモンコンへ行くまでも道も舗装されており、2輪駆動の車でも安心して走ることができる。
ただ途中で道路に突然穴が空いていることもあるので要注意。
しばらく走っていると、途中で地元ヒッチハイカー発見!
公共交通機関があまりないルートではヒッチハイクも普通。
どうやら一緒の方向に行くようなのでピックアップ。狭いですがどうぞ!
おばちゃん達を乗せてまたのどかな景色の中を走ってゆく。
おばちゃん達、急いでたらごめんね。でも景色がきれいだから写真撮りたいんです。
そしてようやくセモンコン村に到着。
セモンコン村には宿泊施設があり、ここでキャンプもできるしガイド付きのトレッキングやポニートレッキングなどのアクティビティも予約できます。レストランもあります。
ただ今回やりたいのは滝が見える場所でキャンプすることなので、ここには止まらずに駐車場を探します。
宿泊施設の駐車場は宿泊者以外使えないので、村人に頼んで家の近くに車を駐車させてもらうことにしました。
宿泊施設である「セモンコンロッジ」からマレツァーネ滝が見える場所までは徒歩で2時間もかからないとのこと。
絶景を求めて早速歩き出します。
素敵な柄の毛布とまとい、バソトハットを被っている。かっこいいです。
こんな景色の中をのんびりと村人に挨拶しながら歩いていく。
このように毛布をマントのように羽織った人をよくレソトで見かけます。これがレソト人のスタイルです。
思わずレソトにいる間、このスタイルを真似したくなりました。
こんなのどかな場所で暮らしているんだなー。
どんどん歩いていくと渓谷が見えてきました。
マレツァ―ネ滝はもう少し。
そして、
マレツァ―ネ滝が見えました。アフリカの雄大な大地からしぶきをあげて流れ落ちる。
落差は200mもあり、南部アフリカでは最大の落差だそうです。
周辺を歩いていると、毛布をまとった男性も滝を見ながら休憩していました。
かっこいいー!マレツァ―ネ滝が背景になってすごく絵になる。
付近で風があまり強くなく、平らな場所を見つけるのが難しかったけど、今夜はここでキャンプ。
乾いた木を集めて、キャンプファイヤー。お湯を沸かしてお茶を飲んで、ご飯食べてといい感じ。
だが実はキャンプしたこの時期(1月末)は雨期。この日の夜は数時間の間強い雨が降り、雷鳴がとどろき、稲光が至る所に。
どうかテントに雷が落ちませんようにと祈りながらの恐ろしい体験でした(笑)
翌日、朝日に照らされるマレツァ―ネ滝を見た後は、滝口に行くことにした。
ここから滝つぼに向かってバンジージャンプ!じゃなくてアブセイリングができるらしい。
セモンコンロッジからツアーがでています。
セモンコンのトレッキングでは、ただ景色を楽しむだけでなく、そこからここに暮らす人々の暮らしも垣間見ることができます。
放牧されている羊をみたり、農業をしている村人に出会ったり、家の近くで遊んでいる子供たちがいたり。
ぜひレソトを訪れた時にはセモンコンでトレッキングしてみてください。
レソトの伝統的遊び取材ツアー
さてセモンコンを一緒に旅したエカイン、彼は自分の研究エリアの他に各地の伝統的な遊びを取材しているそう。
「現在では人気スポーツであるサッカーやバスケットボール、バレーボールなどが世界中で浸透し、これまで各国で遊ばれていた伝統的なゲームは失われようとしている。近代スポーツは勝ち負けをはっきりさせるようなゲームが多いが、伝統的なゲームには仲間と一緒に協力して楽しむゲームが多い。文化保護という意味でも教育的な意味としてもこれらの伝統的なゲームとしての価値を再確認し、保存すべきだ。」
彼の意見に賛成だし、面白そうなので私も手伝うことにしました。
レソト内の学校に連絡し、時間をもらっていくつか伝統的なダンスや遊びを紹介してもらえることになりました。
学校を訪れると、子供たちは大はしゃぎ。突然の外国人の訪問に興奮を隠せません。
せっかくなのでいくつか紹介しましょう!
リズムに合わせて腰を振って踊る。途中で笛を鳴らしたりして楽しくて、盛り上がるダンス。
別の田舎の学校に行った時ですが、同じダンスを高校生ぐらいの女の子たちが上半身裸で、腰蓑だけつけてパフォーマンスしてくれました。
正直かなりびっくりしましたが、レソトでは別に普通のことのようで女の子たちも恥ずかしがる様子もなく堂々と踊っていました。
これはモヒボというダンスで、伝統的には独立の日や王様の誕生日などといっためでたい日をお祝いするときに踊るダンスだそうです。
日本でも馴染みのある遊びもあります。
レソト風なわとびです。
なわとび用の縄もその辺の草むらに行って、数分で手作り。
制服のベルト用の紐を結び付けてこんな遊びもする。
次はレソト風つな引き
つな引きというか、体で!
勝利後には喜び爆発(笑)
レソト風のチェスもある。
大人になるための恐怖のイニシエーションスクール
様々な伝統的な遊びがあるレソトだが、逆に日本人としては恐ろしい慣習もある。
それは「イニシエーションスクール」というもの。
聞いた話では彼らは一定期間山ごもりをして、最終的には割礼するという。
このイニシエーションスクールの内容は秘密となっていて、聞いても誰も教えてくれなかった。
山ごもりの間、食料も自分たちで調達するみたいだ。
この山ごもりに耐えられなかった人は、コミュニティから男として認められず結婚も許されないらしい。
だから男になるために彼らはこの儀式から逃げられない。
レソトの友人ももう少しすればこの儀式に参加するらしい。がんばれ。
おわりに
レソトは小さいですが魅力がたくさんつまった国です。
美しい山々の風景は美しく、標高の高いレソトでは空が青く近く感じます。
しばらく滞在していて何の危険も感じず、平和で治安のよい国だと感じました。
小さい国なので、誰もが誰もを知っているような良いコミュニティがあります。
町でも次々に知り合いと出会って長く話し込んでいる光景をよく見かけました。
それが治安の良さに関係しているのかもしれません。
みなさんも素朴で優しいレソトの人々に会いに、美しい風景を見にレソトを訪れてみてください!
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