2019年の12月2日から、2020年の1月末まで約2ヵ月にわたって、エクアドル滞在のほどんどの時間を過ごしていたのは、エクアドルのコタカチという街。
先住民の文化が強く残る街で滞在していたのは、ワークアウェイというボランティア先を探せるウェブサイトで巡りあったパーマカルチャーファーム。ボランティアとして働きながら素敵な生活に混ぜてもらっていました。
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エクアドルの魅力的な小さな街 コタカチ
私が2ヵ月間滞在していたコタカチはアンデスの山岳地方にある小さな街です。オタバロからは、バスで30分の距離。標高は海抜2400mほどで、太陽が照りつける午後は日光が肌を刺すほど強く、夜になると日本の初秋のように少し冷え込む。
先住民のキチュア民族の方々が多く住み、街からはインバブラ火山がきれいに見える。こじんまりとした素敵な街です。主要な産業は農業で、町から一歩出るとトウモロコシ畑が至る所に。街には皮革を扱う店が多くあり、皮革産業も有名。
コタカチは、元々メキシコで始まった”魔法のように魅惑的な自治体”を選出し観光を促進するPueblo Mágico(プエブロ・マヒコ)で選出された、エクアドルで最初の街。町の中心部は小さいけれど、魅力的なコロニアル風の建物が建ち並ぶ。
こんなコロニアル風の街の中を、伝統的な衣装を身につけたキチュア民族の人々が歩いているのは、ごくごく日常の風景。
日本では着物はもう特別な日にしか身につけないけれど、彼らは民族衣装でバイクにもまたがり、農作業をし、街にも出かける。
コタカチでは街並みが美しいだけでなく「環境保全郡宣言」や「参加型民主主義」などの興味深い取り組みも行われています。環境保護や貧困削減、平等な社会づくりなどに貢献している自治体やNGOに送られる、「ドバイ国際賞」を受賞したこともある。
伝統的な生活を送る人々が多く住みながら、先進的な取り組みも行われている素敵な街なんです。
街の人々もフレンドリー。広場にある一軒のコロニアル風の美しい建物を見つけ、「素敵な家ですねー」とオーナー思われるおじいさんに声をかけると、「古い家ですよ。家の中へもよろしければどうぞ」と案内してもらったり。
2ヵ月もいると、少しずつ知り合いもできてきて、街を歩いていると知っている顔もチラホラ。特に毎週買い物に行くメルカド(市場)ではたくさんの知り合いが。毎回同じ人から野菜や果物を買っていたので。
そんなコタカチの中心部から徒歩で20分ほどの距離に私の滞在していたパーマカルチャーファームがあります。石畳の道を農村風景を眺めながら、村人たちに挨拶しながら、何度も往復した道。
今でも懐かしく思い出す。
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パーマカルチャーファーム、クリキンディで過ごした日々
コタカチから徒歩で20分ほどの距離にあるバタン・コミュニティ。ここに滞在させてもらっていた、クリキンディファームはあります。クリキンディファームのオーナー家族はエクトルさん、アヤさん、ムユ、サッチャ、ユラの5人。
エクトルさんはコタカチ出身のキチュワ民族、アヤさんは日本出身、3人のかわいい子供はエクアドル生まれエクアドル育ち。アヤさんはエクアドルで活動する日本のNGOナマケモノ倶楽部のメンバーとして、現地と日本をつなぐお仕事もされています。エクアドル生活は、もう20年以上にもなるとの事。
ファームからは、インバブラ火山とコタカチ火山の両方が見える。1ヘクタールのファームには、四六時中小鳥のさえずりが聞こえ、ハチドリが蜜を吸い、有機栽培で育てられている野菜やフルーツが。
クリキンディファームは、パーマカルチャーの考えに沿ってデザインされています。パーマカルチャーとは、パーマネント(永続性)と農業(アグリカルチャー)、そして文化(カルチャー)を組み合わせた言葉。
パーマカルチャーを簡単に説明すると、農薬・化学肥料に頼らない持続可能な農業をもとに人と自然が互いに共生し、持続可能なライフスタイルの構築を目指す考え方の事。
持続可能な生活を目指すうえで、有機農業を行うだけでなく、土に還らないゴミの量を減らしたり、再利用するのはもちろんの事、有機物の循環(食べ残しを鶏に与えたり、家畜の糞で肥料を作ったり)を行い、化石燃料ではなく再生利用可能エネルギーを利用したりすることがパーマカルチャーのアイデア。
クリキンディファームでも、パーマカルチャーの考えに沿ってデザインされた、様々な工夫を勉強させていただきました。例えばその一つがコンポストトイレです。
水洗トイレでは、大量の水を消費し、人間の排泄物はゴミとして無駄になり、垂れ流された汚水が水質汚染も引き起こす事も。しかしコンポストトイレでは、水を使用せず人間の排泄物を微生物の力を借りて、畑への肥料に変えてしまいます。
クリキンディで見たコンポストトイレが、今まで使用した中で一番快適で、素晴らしいデザインでした。まずは外見から。この小屋内の右側がトイレになっています。小屋右側に斜めにせり出した部分に排泄物が溜まるようになっていて、その上には黒い鉄板が。
なぜ黒い鉄板かというと黒色が一番熱を吸収して、タンク内の温度が低いより高い方が排泄物の発酵、分解がより促進されるから。
トイレの内部はこんな風になっています。
便座は二つあり、各便座ごとにタンクも別れています。最初は一方のみを使い、そちらが満タンになれば別のタンクを使用します。その間に最初のタンクの排泄物が完全に分解され、無臭の肥料になる仕組み。
一つのタンクが一杯になるのに5人家族で一年半ほどだそう。そして一年半あれば排泄物は分解される。分解された排泄物を取り出すと、一方のタンクが空になるので、そちらをまた使用し始める。素晴らしい。
家の屋根にはソーラーシャワーが付いており、太陽の力で温かいシャワーが。晴れた日には水を混ぜないと熱すぎるぐらいのお湯が出てきてビックリ。曇りの日でも、シャワーには十分な温かいお湯が出てきた。
家の中で使用したりスプリンクラーに使用する水も自然の摂理にしたがって、重力で上方から流れてくる。ポンプで水をわざわざ汲み上げて、無駄なエネルギーを使用するなんてことはない。自然の力を利用した理にかなった工夫。
家の周りにある畑には、無農薬・無化学肥料で育てられたおいしそうな野菜がたっくさん。レタスにピーマン、サヤエンドウ、トマト、ズッキーニ、ブロッコリー、コリアンダー、ニンジン、大根、ケール、ビーツ、ネギなどなど。
農場には野菜だけでなくレモンやアボカドの木、ブラックベリーの実も。毎日野菜やフルーツの様子を見ながら、仕事をするの楽しかったー!
畑ももちろんパーマカルチャーの考え方に沿って、デザインされています。例えばパーマカルチャーでは、農薬を化学肥料を使わないだけでなく、同じ作物ばかりを同じ場所に何回も植えて土が痩せないように輪作をする事。
また、単一栽培でなく共栄作物(コンパニオンプランツ)を選び、多品目栽培をする事などが大切です。共栄作物とは、近くで一緒に栽培することで互いの成長によい影響(栄養を与えあったり、害虫を寄せ付けなかったり)を与えあうとされる植物の組み合わせのこと。
例えばトマトとバジルは、一緒に植えると良い影響を与え合うコンパニオンプランツ。バジルがトマトの余分な水分を吸い、トマトの葉がバジルの葉を日焼けから守り、バジルの香りを虫が嫌がるのでトマトに害虫がつかないなどの相乗効果が。
この地方の畑でよく見かけたのはトウモロコシと豆が一緒に植えられている光景。トウモロコシの茎に豆のつるが這うように伸びて育っていました。そして地面にはカボチャ?ウリ系の植物の蔓が這っていて雑草を防ぐ。
またパーマカルチャーで植える植物を選ぶときには「多機能性」を考えることも大切。例えば生け垣や、防風林の為の木を植える時。このような木もマメ科のものを選ぶことによって、土壌改良ができたり、また枝葉が家畜の餌になるような木を選んだり、一つの木や植物で様々な効果がある種を選ぶ。
どこにどんな植物をどんな風に、どんな植物と一緒に植えるかという事を、自然を観察し学んで考えるという事がパーマカルチャーでは大切な要素のようです。
そんな風にパーマカルチャーの考えに沿って運営されているクリキンディには、おいしくて健康な野菜が元気に育っていました。無農薬・無化学肥料でも、自然から学び、工夫することで、持続可能な方法でこんなにも色んな野菜を安全に育てることができるんだなー。
色んな事を勉強させてもらいました。
クリキンディファームでは、お家も素敵でした。自然素材でできた藁の家(ストローベイルハウス)。乾燥させた藁を圧縮してブロックにし、それらを積み上げて建設した家。そのブロックに、土と漆喰を塗って仕上げる。解体すると土に還る、環境に優しい家。
壁となる藁のブロックが呼吸をする断熱材の役割を果たし、室内の温度・湿度を一定に保つことで、冬は暖かく夏は涼しい。藁のブロックでできた壁は、分厚いので防音性も高い。
ストローベイルハウスの建設も間取りから、木材の入手、大工仕事まで全て手作りでされたそう。こんな素敵な家が手作りで建設できるなんて。天井が高く広々として、温かみがあり心地よい雰囲気がある、めっちゃ素敵な家でした。
子供達が走り回れる大きさのスペースがあり、かくれんぼをして遊んだり。家の柱に子供たちがよじ登って遊んでいるのにはびっくり(笑)日本の一般的なマンションやアパートメント住まいの家じゃ考えられない。
朝から晩まで、毎日賑やかだったな―。懐かしい。
クリキンディファームの滞在で大きな楽しみの一つだったのは、毎日の食事。畑で採れた新鮮オーガニック野菜を使って、アヤさんが作る料理は、どれもおいしかった。懐かしの日本料理も食べさせてもらいました。次回はいつ食べれることやら。
そしてアヤさんが凄いのは、何でも手作りしているところ。キムチ、味噌、お好み焼きソース、納豆、食べるラー油、各種ジャム、各種パン、各種ピックル、クッキー、などなど。日本に帰ったら、自分も色々手作りでやってみたい。
そして手作りでできたパンやジャムなどは、毎週木曜日にあるコタカチのファーマーズマーケットで畑で採れた新鮮野菜と共に販売します。その前日と当日の朝は、野菜の収穫に、パンを焼いたりと大忙し。
ファーマーズマーケットの主なお客さんは、外国から移住してきた人々。コタカチは小さい街で先住民の方々が多く住んでいる場所なのですが、外国(主にアメリカ)から移住してきた人々の割合も少なくない街。ここだけ見ると、まるでエクアドルじゃないよう。
クリキンディファームでボランティアとして滞在させてもらっている間は、月曜日から木曜日にあるファーマーズマーケットの日まで働き、金・土・日曜日は休み。休みの日はコタカチ周辺を旅したり、ただ家でのーんびり過ごしたり。
先住民の方々が住む地域に滞在していたので、彼らの文化にも少しだけお邪魔させていただきました。例えば12月21日の冬至の日には、「水の保護」のためのお祭りがありました。
老若男女美しい民族衣装に身を包んだ人々が、棒にぶら下げられた鶏たちとフルーツと共に、輪になって踊りながら行進する姿。夜の11時まで食べて、飲んで、踊って、みんな楽しそうだった。
特別なお祭りの日でなくても、毎週土曜日は花火がどこかで上がったり、音楽が大音量で鳴り響いて、必ずどこかでパーティーが行われていた(笑)
2019年のクリスマスと新年を過ごしたのもコタカチ。クリスマスはホストファミリーの親戚の方々を家に向かえてお祝いました。
20人程が集まった家は賑やか!こんな素敵な家族に混ぜてもらって幸せだった。
クリスマスといえばご馳走!七面鳥のロースト!
そして長女のムユちゃんが手作りしたスペシャルクリスマスケーキ2019。14歳でこんなケーキが手作りできるなんて恐るべし。
新年はホストファミリーの友人宅で、また賑やかにお祝いしました。友人達で集まって、一緒に料理して、食べて飲んで、新年の祝い。
2019年の最後の日、街の中心にある広場では、音楽に合わせて踊る人々の姿が。
そんな人々をよそに、私とエクトルが向かったのは、家から少し離れた場所にある清流。川の近くには蛍が光を放ちながら舞っているような場所。そこで沐浴をして2020年を迎えました。
素敵な2ヵ月の滞在をありがとう!今ではコタカチはエクアドルの中で一番のお気に入りの場所。別れるのは辛かったけれど、きっとまた会えると信じて旅を続けます。
おわりに
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