クエンカを離れ、やってきたのは次なるボランティア先のカニャル(Cañar)。ここではアンデス山脈に伝わる、伝統的な薬を処方するシャーマンの家にお世話になることに。
アンデス山脈の美しい農村で過ごし、テマスカル(Temazcal)と呼ばれるサウナを利用して行う、伝統的な儀式にも参加させていただきました。
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カニャルの農村で過ごす日々
美しく広がるアンデス山脈の谷沿いに、クエンカからカニャルへ。エクアドルのアンデス山脈は緑の美しさが目立つ。乾燥していた乾季のペルーのアンデスとは、また一味違う。
ここカニャルではワークアウェイで連絡をとっていた、アレックス一家にお世話になることになっている。彼はアンデスに伝わる伝統的な薬を処方するお医者さん兼シャーマン。一体どんな経験がここでは待っているのだろう?
滞在初日、霧が立ち込めるカニャルの街に到着。アレックスがバスターミナルまで迎えに来てくれた。シャーマンとイメージすると、髭の生えたおじいさんを想像していたのだが、アレックスは35歳と若手のシャーマンだった。
早速これからの滞在先へ案内してくれた。どうやら滞在先はカニャルではなく、少し離れたピルコパタ(Pillcopata)と呼ばれるコミュニティにあるらしい。そのピルコパタでの私の滞在先がこちら。
このペイントは以前に滞在していたボランティアが描いたそう。素敵な絵ですね。俺にはこんな絵を描けるような才能は持ちあわせておりません。
家の裏庭からは、カニャル地方の美しいアンデス山脈の絶景が。これから毎日こんな風景を眺めることができるなんて幸せ。
裏庭には、儀式で使用する医療効果のあるタバコなどの植物が栽培されています。下記の写真はサン・ペドロと呼ばれるサボテン。これを小さく輪切りにし、沸騰した水で煎じて薬を作ったりもします。
私の仕事は、主にこの裏庭でのガーデニング。栽培されている医療用の植物のお世話をします。医療用の植物だけでなく、キャベツやブロッコリーなど食用の野菜やオレガノなどのハーブ類も栽培されていました。
毎朝、採れたてのハーブでハーブティーを作って楽しんでいました。懐かしい。
ちなみに私のアコモデーションはこれでした。家の中にテント(笑)まあでも中にはベッド用のマットレスが敷いてあるので夜は快適。
ただ一つ問題は騒音。キトまで続く、エクアドルの主要道路「パン・アメリカーナ」のすぐそばに家があったので、大型トラックがたくさん通る。夜もトラックが通過するので、騒音で最初の数日は中々眠れなかった。数日後は慣れで、騒音の中でも眠れるように。
でも将来は絶対交通量の多い場所には住みたくない。こんな騒音の中で二度と寝たくないけれど。
それでも裏庭に行けば、ピースフルな風景が広がっていて、のんびりしたり、ヨガをしたりできたので、何とか生きのびることができました。
仕事後の自由時間はピルコパタの村を散策。ここではヒツジや牛の放牧が行われ、トウモロコシ,コムギ,オオムギ,ジャガイモ,果樹などが栽培されていました。外国人なんてめったに訪れないので、村人からはジロジロと興味津々な視線が。
のどかな農村ピルコパタ。
歩いていると廃線になった汽車の線路の跡が。南米の電車ってどこも廃線になっている場所が多い。ほとんどの国がトラック輸送に頼っている。
この線路をずっと歩いていくと、ピルコパタから最も近い街であるエル・タンボ(El Tambo)に到着する。
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エル・タンボを散策 神聖なインカ浴場跡とヤナコウリ山
ピルコパタから線路を辿って、辿り着いたのはエル・タンボ。ここには、かつて駅があった。
今はツーリストインフォメーションセンターとして利用されているだけで、電車はこない。もったいないなー。電車再開すればいいのに。アルゼンチンのように、何か政治的な理由があるのだろうか?
そんなエル・タンボ、小さな町ですが町の中心の広場には立派な教会があり、
毎週土曜日には周辺の村から人々が集まる市場があり賑わっている。
鮮やかな民族衣装を身にまとった人々、周辺には10以上の違ったコミュニティがあり、それぞれのコミュニティで民族衣装が異なるのだとか。
いつも野菜を買わせてもらっているおばちゃんに「写真撮っていい?」と聞くと「いいよ。」との返答。でも照れちゃって、横をむいて吹き出すおばちゃん達。フレンドリーなんだけど、シャイなんだよなー。
エル・タンボの駅から、さらに電車の線路を下って行くと、コヨクトル(Coyoctor)という村まで行けるのですが、その途中にBaños del Inca(インカ浴場)と呼ばれる遺跡があります。
この遺跡までエル・タンボから線路を辿って、歩いていくのが楽しい。
道中にカニャル地方の美しい農村風景を見ながら、
バニョス・デル・インカ(インカ浴場)と呼ばれる遺跡に到着。
インカ浴場と言う名前ですが、ここは公共の浴場のような場所ではなく、祭壇などがあり、儀式を行う用の特別な場所であったそうです。
儀式のため体を浄化する目的で、一部の特別な人々のための浴場であったのだとか。
このバニョス・デル・インカの後ろに見えるのが、ヤナコウリ山(Cerro Yanacaur)です。ここもカニャルの人々にとって、神聖な場所と考えられており、現在でも儀式などが行われています。
そんな神聖な山に登るトレッキングルートがあるみたいなので、登ってみました。
急登を登っていくと、そこからエル・タンボの街や、周辺の村々が一望できます。
頂上の展望台には休憩できる場所も。地元の人々にとっても大切な場所であることが感じられる。
さらに周辺の小さな村々を散策。羊や牛が至る所に放牧されていて、家には鶏が。地元の人はスペイン語も話すのですが、キチュア語を話す人が多く、私には理解不能。
そんな中でも見ず知らずの日本人に、フレンドリーに接してくれる現地の人々。色んなルーツを持った人々に出会えること、交流できることに感謝。
時はきた アンデス山脈に伝わる伝統的な儀式「サン・ペドロ」に挑戦
ピルコパタにあるアンデス地方に伝わる伝統的な治療を行う診療所に滞在して数日、初めてお客さんがきました。その儀式に私も同席させていただくことに。両親と祖母に連れられ診療に来たのは15歳ぐらいの若い男の子。悪霊を取り去り、魂を浄化するのが目的だという。
まずは木炭を部屋の中央に置かれた鉢へ。煙がモクモクと部屋にいきわたる。その後、少し火をつけたサンダルウッドの良い香りが。様々な花のエッセンスを配合した、液体をシャーマンのアレックスが口に含み、霧状にして吐き出す。これで儀式を行う部屋を浄化していく。
その後、目の前には貝殻と怪しげな黒い液体が運ばれてくる。液体の正体は、シンガリと呼ばれるタバコを煎じたもの。これを貝殻に注ぎ、鼻から一気に吸い込む。ツーンとした激しい苦み、そして痛み、咳き込みまくって、涙もでまくり。儀式を行うときはシャーマンも一緒に同じことをする。彼も同じようにせき込みまくり、泣きまくり。その後同じことを、両方の鼻の穴から3回する。
鼻からシンガリを吸い込んだ後、酔っ払った時よりも気持ちいいような、頭がフワフワとした感じに。不思議な感覚。
この後、香りの良いきれいな花を入れたお湯で体をきれいにする。そのため少年はシャワー室へ。
少年がシャワー室から戻ってくると、儀式は再会。体をマッサージしたり、歌を歌いながら、箒で体をなでるように掃いていき、魂をきれいにしていく。
その後は特殊な道具を使用して、鼻から調合済みの薬を吸引させる。
そして、体全体に煙をかけるように体を浄化し、儀式終了。儀式終了後、だんだんと気持ち悪くなってきた俺は、耐えきれなくなってトイレで吐いてしまった。
診療を受けに来た少年の家族と話していると、この地域に住む人にとっては、このような伝統的な診療に頼る事が多いという。一般的な病院での治療では治らない症状も、治ることもあるのだとか。
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このお客さんが診療を受けた数日後、もっと大きなグループでの儀式が行われという事で、せっかくなので私も参加させてもらう事に。その儀式はテマスカル(Temazcal)と呼ばれ、どうやらサウナを利用し、「サン・ペドロ」と呼ばれる薬を飲むという事らしい。
このような儀式ではアマゾン地域で行われる「アヤワスカ」が有名ですが、ここアンデス地方では「サン・ペドロ」が一般的なようです。この「サン・ペドロ」という薬によって、スピリチュアルな世界とつながり、ビジョンを見られるという。一体どんな風になるのか。楽しみだけど、ちょっと不安も。
儀式が行われる当日、私はボランティアとして滞在しているので儀式の準備からお手伝い。まずは薪を集めて火をおこし、サウナで利用するための大量の石をキャンプファイヤーで赤くなるまで温める。
その間に少しずつ儀式に参加する人々が集まり始め、音楽を演奏し始める。午後8:00外は真っ暗、明かりはキャンプファイヤーの光のみ。
儀式が始まり、火を囲んで参加者が円になって座る。まずはシンガリ(タバコを煎じた液体)が順番に配られ、貝殻で鼻から吸い込んでいく。それが片鼻3回ずつ、合計6回行われる。その間もずっとギターと太鼓、小太鼓を使った伝統的な歌と音楽が演奏されている。
この音楽と美しいキャンプファイヤー、そしてシンガリの効果もあって、どんどんと頭がフワフワと。何だか生きている喜び、ここに存在することの感謝のような幸せで不思議な気分になってきました。
その後「サン・ペドロ」がココナッツでできた容器に配られ、一人ずつ飲み干していきます。
サン・ペドロを飲み干した後、いよいよサウナの中へ。水着だけになり、真っ暗なサウナの中へ。何も見えず、外から太鼓と小太鼓による「ドンドンドンドン」という単調なリズムの音楽だけが聞こえてくる不思議な空間。そこに外から真っ赤な石が運ばれてきて、シャーマンのアレックスが水をかけていく。この赤い石が暗闇で輝き、何とも言えず美しい。
ジュ~~~という音と共に蒸気があふれ出し、サウナ内を温めていく。最初のうちは「うわ~気持ちいい~」という感じだったけれど、数回水をかけると中は尋常じゃないくらい高温に。冗談抜きで「これはアカンやろ。焼け死ぬかも」というぐらいの高温。そしてサウナ室内にいる全員で太鼓と小太鼓の音に合わせて歌を歌う。
これを自然の4つのエレメント風・火・水・土にささげるという意味で4回繰り返します。
1回目は気持ちよく終了。体から湧き出す汗、地面や体から発せられる熱で何だか自然と魂と体がつながっているような感じに。2回目、前回よりも凄まじい暑さで皮膚が痛いほど。サン・ペドロの幻覚効果か石の放つ光が、何だか人の顔に見えてきて、先祖のまた先祖、そのずっと前からつながってきた命に見守ってもらっているような気が。
3回目。もう喉がカラカラで、「このままだとヤバいよ」という状態のところで、水が各人に配られ何とか復活。そしてまたジュ~という音と共にサウナは地獄に。もう絶対ダメと思う自分の弱さに情けなくなりながらも、まだ耐えることができるという強さも感じたかも?
4回目。最後は土のエレメント。ジュ~という音(内心もうやめてくれーと思っている笑)。ここでは何だか感謝の気持ちが湧いてきた。今ここに生きている事の喜び、生きているうちに少しでも返したい。何が自分にできるだろう?って。
4回目の儀式が終了し、ホッとしていたところ。最後だからということで、音楽が再び鳴りだし、再びジュ~という音と共にサウナが高温に。「アホかー!もういい加減にやめてくれ。」なぜかほかのメンバーはノリノリでむかつく。サウナから出てきたときはもうヘトヘト。
だけれど、サウナによって体の不純物が取り除かれ、サウナでの苦しみ?を乗り越えたことで心もスッキリとしたような気分に。外は凍えるほど寒いはずなのに、サウナで体が温まっているので、全然寒くない。
儀式終了後、参加した仲間と共に感想を話し合い。午前2:00頃には解散。自分の心と体、そして自然がつながったかのような感覚を味わえた、不思議な体験でした。
おわりに
このようなアンデス地方に伝わる儀式、機会があれば是非体験してみてください。
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