[チリ] パタゴニア サン・ロレンソ牧場で働きながら絶景の氷河や山岳風景を訪れる

とうとうチリ・パタゴニアのかなり南までやってきた。リオ・トランキーロやコクランといった場所まで。ここまでくると町の中心部以外は舗装された道路は一切なく、ほぼ砂利道。

そんな中でも滞在していたのは電気も通っていない田舎中のど田舎。というかもう山の中です。標高3600mのSan Loranzo(サン・ロレンソ)のすぐ麓にある牧場。ファームからは分厚い雪につつまれ氷河を抱いた美しい山が見える。

幸運にもボランティアとして、この地域の開拓者であるLuis Soto(ルイス・ソト)一家の暮らしに加えてもらえることに。今でも4X4の車、少し前までは馬か徒歩でしか辿り着けなかった、パタゴニアの辺境の地で、強い文化体験が始まる。

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San Lorenzo牧場はどこに?

サン・ロレンソ牧場はコックランの町から60kmほど離れた場所にあります。まずはコックランの市役所で働くルイスの息子の一人、マティアスと町で対面。今日はコックランに滞在して、翌日にファームに向かうことに。

彼らは英語が話せないので、すべてスペイン語でのやりとりです。そしてパタゴニアの田舎に住んでるから訛りがあるのかな?すごい何言ってるか、わかりづらいんですけど。スペイン語初心者にはキツイ。

翌朝マティアスの兄であるマルドゥックにも会う。彼らは三人兄弟で、もう一人マティアスの双子の兄弟であるフェデリコがいる。車に乗り込みコックランを出て砂利道を走っていく。車窓からは絶景の風景が目の前に広がる。

そして車はさらに辺境の地へと向かっていく。4輪駆動車でしか走れない、でこぼこの道をゆっくりと進んでいく。開拓当初はもちろん車が通れる道などなく、馬ですべての作業をしていたようです。

そんな道をしばらく走っていくと、ラグーンが見えてくる。ラグーンにはカモが。めったに人が通らないから、車が通ると大慌てで飛び立つ。そして背後にはサン・ロレンソが見える。車はどうやらまだまだ奥に行くようです。こんな場所で牧場やりながら暮らしてるなんて。

膝上までは確実にある川を、ブーンと豪快に車で超えて丘を登っていくと、これから1ヵ月間滞在する場所が見えてきました。美しく巨大なサン・ロレンソの山が家の背後に。なんて場所だ。

家の裏口から歩いてすぐに見えるのがこの景色。

こんな夢みたいな場所に、仕事手伝いながら1ヵ月間も滞在できるなんて本当にラッキー!「今まで日本人を見たのは3回しかない。ここに来た日本人は覚えている限り、お前で2人目だ」とルイス。わお!

まるで国立公園のようですが、すべて個人の所有地。もちろん国立公園にしようという話も多々あるみたいですが、断り続けているよう。敷地内には金や銀など貴重な鉱物がたくさん眠っているのだとか。

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毎日羊肉!働いて共に暮らす

さて働くもの食うべからず。通常(夜飲みすぎない限り)サン・ロレンソ牧場の朝は早い。まず最初の仕事は家にあるストーブに薪を入れて、火をおこす事。最初に起きた人の仕事。

そしてポットをストーブの上に置いてお湯を沸かす。このお湯は、まずマテ茶を飲むため。マテ茶と言えばアルゼンチンやウルグアイで飲まれる飲料といったイメージですが、ここチリ・パタゴニアでも定番の飲料。

これがだいたい朝7:00から7:30ぐらい。そして朝から晩までほぼ一日中、ストーブには火がともっていいます。1月といえどもパタゴニア、標高750mの夏は寒い。雨が降った日はとくに。

ちなみにパタゴニアの田舎暮らしではガスは貴重。ここまで運んでくるのも大変です。ということで部屋を暖めるのも調理もすべて薪ストーブでやります。薪ストーブは下の写真のようなもの。

ストーブの上部にあるタンクには、ストーブの熱で温めたお湯を貯めておくことができます。調理はストーブの上で行います。オーブンもあります。そして気づかれたでしょうか?朝にも関わらずストーブの右上には肉のようなものが。

サン・ロレンソ牧場では朝からアサド(羊肉バーベキュー)を食べます。夜ご飯の残りのアサドという時もありますが、朝からオーブンで調理することも。「牧場での仕事は大変だから、いっぱい食べろよー」と。

滞在中は朝から晩まで新鮮な羊肉を食べまくっていました。おかげで胃袋が広がって、最近では常にお腹が空いているような気がします。

朝8:30には毎日、最寄りのコックラン市から無線で連絡が入ります。「元気ですかー?変わりありませんか?」などの簡単なやりとり。ちなみにここには電話の電波もありません。連絡は全て無線で行われます。

だいたいこの無線でのやりとりが終わったぐらいから仕事開始。いろんな仕事を体験させてもらいました。

まず最初にやったのが羊毛を刈るのを手伝う仕事です。羊毛を刈る場所の掃除と羊の捕獲、羊毛の選別作業が主な仕事。

まず羊達を狭いスペースに閉じ込め、捕まえる羊に狙いを定める。ゆっくりと後ろから近づいていきバッと素早く素手で捕まえます。羊が転んでしまって、羊毛が汚れてしまわないように。羊の後ろ脚一本を手でつかんで引っ張るようにして、羊を運んできます。

これが中々大変な仕事。メスの羊は大人しくて良いのですが、オスの羊はでかくて強くてめっちゃ大変でした。羊も連れていかれるのが嫌なので、脚をブンブン振り回して抵抗してきます。

そして連れてきた羊をルイスやマティアスに引き渡します。「おートモヤ!でかいの連れてきたな!」と楽しそう。

さんざん暴れて連れてこられた羊ですが、彼らの手にかかると、まるで抵抗を忘れた赤ちゃんのよう。ハサミで大人しくチョキチョキと毛を刈られていきます。毛を刈るのにも順番があり、羊の操り方やポジションがある。思わず見とれてしまいます。

ゲラと呼ばれる小さな毛のかたまりと頭の部分の毛は、一緒の袋に。ワタと呼ばれる下腹の部分は別の袋に。残りの大きなパートはクルクルと巻いて、また別の袋に。1kgは1500ペソ(2600円)ほどで取引されているそう。

次の仕事は、羊毛を刈り取った羊を集めて、化学薬品の入ったお風呂に入れること。これは羊についた寄生虫を殺すため。

当然羊達は嫌がるので1匹ずつ持ち上げて、プールに落とします。なかなかの重労働。羊たちが器用に泳ぐのにもビックリ。

他にもファームの一般的な仕事を一通り。フェンスを作るために、穴を掘りまくったり。薪を切らさないように、薪割りをしまくったり。牧草を刈って乾燥させて、巨大な木製の箱で圧縮し、冬用の干し草を準備したり。

病気になった牛のミルクを採取しに行ったり。沼にはまってしまった牛にチェーンをつないで、トラクターで引っ張り出して助けたり。馬に乗りながら、カウボーイみたいに紐を投げて牛を捕まえる姿は、映画のワンシーンみたいだった。

ここでは毎日羊肉を食べていると話しましたが、もちろんスーパーマーケットなどはなく、自分達で食べる肉は自分たちで準備します。羊を屠殺するところから、全て手伝っていました。「いのちを食べる」ということ。

ナイフを首に刺し、羊がゆっくりと呼吸を止めていく。丁寧に毛皮をはぎ、内臓を取り出す。大体ヒツジ1頭を、1週間の食事で食べていました。脂肪も無駄にせず、後に油代わりに使用します。

仕事は大変でしたが、毎日準備してくれるパワー満点の食事。この地域伝統のトルタフリタ(揚げパン)は、羊の脂肪で揚げたもの。羊肉の香りがしておいしい。

パンを作るのも仕事の1つでした。油を使う代わりに、ここでも羊の脂肪を使います。オーブン内の温度を200度以上に上げてから、焼き上げます。

ここパタゴニアでは、何を食べるにもパンが欠かせません。肉を食べる時も、パスタを食べる時も、ご飯を食べる時も常にパンがお供します。

仕事は大変でしたが、仕事合間に飲むビール。仕事後のアサドにワイン。何より美しい自然の中での仕事と文化体験は素晴らしい経験でした。

サン・ロレンソの美しい山岳風景

ここサン・ロレンソ牧場は、3600mのサン・ロレンソ山の麓にあります。そのため付近には、トレッキングで訪れることのできる、美しい場所が数々あります。

サン・ロレンソの山頂の登頂を目指す人々も、ここを拠点にして登山を始めます。ルイスファミリーはそういった人々を当初からホストしてきました。今ではキャンプサイトや山小屋まで整備されています。

5000ペソ(1泊8ドルほどで滞在可能)ただまだ知られておらず、交通アクセスも悪いので、訪れる旅行者はまれ。滞在していた1ヵ月の間に、ツアーグループが3回。個人旅行者は6組しか見ませんでした。こんなに美しい場所なのに。

1:Toni Rohrer Refugio(山小屋)コース

牧場から一番知られているルートは、「Toni Rohrer Refugio(山小屋)」とその先にあるラグーナ、氷河を訪れるコース。牧場からは3時間ほどの距離で辿り着けます。もちろんこの山小屋に滞在することも可能です。

牧場から山を1つ挟んだ谷沿いを歩いていくと、山小屋に辿り着きます。山小屋は森に囲まれるように建てられており、風や鳥の声しか聞こえないほど静かで穏やか。

内部には薪ストーブやポットなど、食事をとるためのテーブル、読書用の本などもあります。各国から訪れた旅行者からのメッセージもたくさん。2階にマットレスを敷いて眠ることができます。

この山小屋ですが、サン・ロレンソ登頂中に亡くなったToni Rohrerさんの奥さんとルイス一家が一緒に建てたそう。思いが詰まった素敵で温かい山小屋です。

そして、この山小屋からすぐそばにあるのがこの絶景。

ここから正規のルートではありませんが、歩いてきた谷沿いに牧場に戻るのではなく、山を越えて牧場に戻ることもできます。ガレ場をよじ登り、雪渓を越えて頂上に辿り着くとコンドルが飛んでいるのを発見。そして絶景が。

360度のパノラマを楽しむことができます。

2:トランキーロ湖

牧場の裏側から、トラクター用の道を越えていくと辿り着くのがトランキーロ湖コース。牧場からは3時間ほどの距離。このコース上には羊や牛、馬が放牧されています。

フェンスで敷地が仕切られているので、ゲートを開けていかなければなりません。開けたゲートをまた閉めて先に進んでいきます。

まだ開拓途中である森を越え、岩場を登っていくと、湖に氷河の絶景が。

ここからさらに先に行くコースもあるのだとか。また今度訪れた時には挑戦してみたい。

3:トレス・ラグーナ

牧場の裏側からスタートし、トランキーロ湖から流れる川を越え、川の西側を歩いていくと辿り着くのがトレス・ラグーナ。まったくマークされていないルートですが、辿り着いた先には絶景が広がります。

名前の通りラグーンが3つあります。最初のラグーンを越え、さらに上にある二つのラグーンは青と緑と違う色をしています。

3つ目のラグーンの先には、氷河が見えます。標高1200mほどですが、氷河があるんです。さすがパタゴニア。

この氷河のすぐ近くまで行くことができます。氷河のすぐ下に立ったり、氷河に触ったりすることも。

横から見ると氷河ってすごく高い、

時折、氷河の一部が崩れて落ちてきて危ない。

これが個人所有の土地だなんて。国立公園よりすごいよ!ここサン・ロレンソで働いている間は、家の庭を散歩する感覚でこんな絶景を見てました。

ちなみに各スポットの位置はこちら。誰の参考になるのか、わかりませんが。

2019年がきた!新年を一緒に祝う

2015年はニュージーランド、2016年はインド、2017年はウズベキスタン、2018年は南アフリカ。そして今年2019年はチリ、パタゴニア、サン・ロレンソで新年を迎えました。

2018年最後の日という事も関係なく、夕方までは通常通りに仕事。そして迎えた夜、たらふくの料理とアルコール飲料で、新年をお祝いするのはどこも同じ。「せっかくだから寿司を作ってくれないか」と言われたので、寿司も作る。アサドに寿司にデザートにと食べまくる。

食べまくった後は2019年の訪れをシャンパンを準備しながら待ち。フェリス!エル・アニョ・ヌエボ―という叫びと共に、シャンパンオープン。どこからかお祝いの銃声が鳴り響く!

朝まで飲み明かした翌日、1月1日。この日は親戚の家々を訪ねることに。まずはルイスのお母さんの家を訪ねる。おばあちゃん今年94歳です。年の割に背筋もピンと伸びて、すごく健康。家畜の鶏も自分で追い回しています。4世代一同のルイス・ファミリー。

おばあちゃんを車に乗せて、別の親戚の家を訪ねると、パチパチという音がしながら、良い匂いがする。子羊のアサド・パロ。木炭で子羊を丸ごとじっくりと焼く料理が準備されている。

昨日に引き続きここでも食べまくり、そしてワインを伝統的な方法で飲む。牛革で作られた、ブーツのような形をした容器。その中には赤ワインがたっぷり。ビノ・ボテとここでは呼ばれる。

その容器を両手で持ち口につけて飲むのでなく、容器を持った手を顔からできるだけ離し、空気の圧力でワインを飛ばすように口に飛び込ませるように飲むのが伝統。慣れないのでワインが顔中にかかる。

アサドを食べながら、ルイスやマティアスがフォークソングを弾き始める。それに合わせて94歳のおばあちゃんも一緒に踊る。毎年こんな風に新年を祝っているんだろう。素敵だ。

その日夜には牧場に戻るはずだったが、飲みすぎて誰も車を運転できず、そのまま親戚の家に泊まる。翌日も誰もが二日酔い。何とかマルドゥックが車を運転して帰るも、何と途中で故障。

ルイスは二日酔いすぎて、起こしても起きない。しょうがないのでルイスを車に残して、6kmほど歩いて帰ることに。ごめんルイス。後でルイスは故障した車を運転して、自力で家まで戻ってきました。ドタバタのハッピーニューイヤー2019年。

おわりに

こんなに美しい場所で素敵なルイスファミリーと一緒に過ごした1ヵ月。楽しく強烈なパタゴニアの文化を体験させてくれてありがとう!

カレテラ・アウストラル街道の最南部 オヒギンズから国境を越え、アルゼンチン エル・チャルテンへ 

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コメント

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